特別縁故者もいない場合、「国有財産」に
少子高齢化や核家族化等の社会現象または相続人全員が相続放棄をしてしまったことが原因となって所有者のいない空き家や空き地が日本全国に多く存在しています。
2016(平成28)年に農林水産省が全国の農地約526万ヘクタールのうち17.7%にあたる約93万4千ヘクタールが相続などの理由で所有者がわからなくなっていると発表しました。これは東京ドーム約20万個に相当する広さになります。
さらに、所有者がわからなくなっている農地のうち、約5万4千ヘクタールが耕作放棄地となっていることもわかりました。これは東京ドーム約1155個の広さに相当する農地が耕作されないまま放置されていることになります。
そのまま放置すれば、地域の治安や防火、衛生そして景観を損なう原因となるほか、日本の農業政策の根幹を揺るがしかねなくなります。相続人が誰一人として存在しない空き家や空き地の相続はどうなるのでしょうか。
民法では、相続人が存在しない場面には、家庭裁判所は遺産に利害関係を持っている人を探すため、検察官の請求によって家庭裁判所は遺産の管理人を選任し公告をします。
管理人は2ヵ月以内にすべての相続債権者や受遺者に「この期間内に権利の申し出をせよ」と公示をします。それでも相続人が現れないときには、さらに6ヵ月以上の期間を定めて公告をします。
それでもなお現れないときには、被相続人と特別の縁故があった者、すなわち生活をともにしていた内縁の夫や妻、または被相続人の療養看護に勤めていた者の請求により遺産の全部、または一部を分与します。
特別縁故者もいなかった場合には、「遺産のすべては、国庫に帰属する」という法律に基づいて国有財産となってしまいます。
私たちは、ある日突然、自分の意に反して誰もが被相続人、相続人または受遺者となったり、不法行為、違法契約または損害賠償問題などの事件に巻き込まれたりする可能性があるのです。
相続というデリケートな問題ではありますが、被相続人は、自分の持っている財産を誰に託すのかを、最終意思の表示として遺言に残しておくなどの法律効果を発生させておくことが大切です。
空き家相続にも活用したい「小規模宅地等の特例減税」
小規模宅地等の特例減税という制度は見逃せません。これは、居住用の土地を持っている人が、相続税を大幅に安くできるという制度です。
今まで住んでいた被相続人が死亡したあとに、財産を相続した相続人が、これからも住み続けることは、高い相続税を払えなくて土地を手ばなす事態を避けるために有効な方法となります。
小規模宅地等の特例では、亡くなった宅地の所有者や生活をともにする家族の事業用または居住用の宅地が一定の要件を満たすことで、その宅地の評価額を最大で80%減額してもらえる規定があります。たとえば1億円の価値がある宅地の場合でも最大80%を減税してもらえると、2000万円で税金計算してもらえるので見逃すことができない規定です。
相続後は、相続税の申告期限(原則、相続後10ヵ月)までの間、宅地の所有者がその宅地を継続して利用していることが必要です。また、面積の要件として、面積の上限が事業用宅地は400㎡、居住用宅地が330㎡となっています。