「現状のままでいい」という零細企業が生き残れない理由

俗に「零細」と呼ばれる小さな会社を成長軌道に乗せるためには、自社の経営状態を冷静かつ客観的に見つめ直すことが必要です。本連載では、株式会社エッサム編集協力、株式会社古田経営・常務取締役の飯島彰仁氏、会計事務所経営支援塾の著書『9割が結果を出す! 小さな会社の脱零細マニュアル』(あさ出版)から一部を抜粋し、小さな会社が「脱零細」を実現するための改善ポイントをレクチャーしていきます。

相当な覚悟がなければ「現状維持」すら厳しい現実

零細と呼ばれるような小さな会社に限らず、中小企業でも「現状のままでいい」とか「ムリに成長を求めなくてもいい」と考えている社長は一定程度はいるものです。

 

しかしその考え方は、いまはまったく通用しません。それは単純に考えてみると誰でもわかることです。

 

たとえば、右肩上がりの経済のとき、あなたの会社が業界で100社あるうちの100番目だったとしましょう。その状況で「現状のままでいい」という経営をしていたら、3年後もあなたの会社は100番目のままです。

 

しかし、右肩上がりの経済成長に乗っていれば、あなたの会社は同じ100番目であったとしても、業績は3年前より少しはよくなっているはず。

 

では、右肩下がりの経済で同じように考えてみましょう。「現状のままでいい」と思っている会社の3年後は、やはり同じ100番目のまま。そして右肩下がりの経済に乗っていれば、業績は着実に悪くなっているはずです。

 

「なんだ、あたり前のことをいって……」と思うかもしれませんが、ここが重要なのです。会社は「売上高から費用を差し引いて利益を出す」という損益の観点から考えると、業績が下がると赤字・損失になってしまうケースがあります。

 

また、資金繰りの観点から考えると、資金が枯渇してマイナスになってしまうケースもあります。

 

いまの経済はプラスの時期もあり、そもそも経済は一進一退を続けています。ところが、人口は減少を続けているのですから、市場が少しずつ縮小しています。長期的な視点で見ると、成長は鈍化し、むしろ経済は右肩下がりと考えてよいでしょう[図表1]。

 

[図表1] 経済成長率の推移

出典:世界経済のネタ帳
出典:世界経済のネタ帳

 

すると、伸びる会社とそうでない会社の格差は、大きくなっているかもしれません。

 

そのなかで「現状のままでよい」と考えていると、早晩、会社は行き詰まり、たたまざるを得ない状況を迎えます。現状維持の対応をしているとその先には衰退の道しかないのです。

 

右肩下がり気味の経済環境のなかで、「現状維持」を実現するには、相当の意気込みで事業に邁進していかないと実現できません。

 

川の流れのなかで「現状のままでいい」と思い、これまでと同じように浮かんでいたら流されるだけです。上流に向かって必死になって泳がないと、現状維持はできません。それと同じようなことです。

 

このことを理解できている社長は、新しい何か、つまり、新しい市場や事業領域への進出、社内の体制整備などに取り組んでいるものです。

赤字を出す節税対策では、会社は衰退に向かって当然

同じことを、経営数字、たとえば損益の観点から考えてみましょう。

 

損益の関係を簡略化して示すと、[図表2]のようになります。

 

[図表2]損益計算書のイメージ

 

売上高は変動費という費用と粗利益額に分けることができます。変動費とは仕入代金、外注費、材料費で、売上高の増減によって変動する費用のことです。売上高から変動費を差し引いたものが粗利益額です。

 

そして、粗利益額は固定費と利益(経常利益)に分けることができます。固定費とは変動費以外の毎月固定的にかかる費用で、多くの中小企業では人件費が該当します(もちろん金利などの経費もあり、また、人件費にも変動費に該当するような費用がありますが、ここではそうした細かな分類や説明は省きます)。

 

また、利益(経常利益)のなかには、収めるべき法人税などの税金が含まれます。この税金を納める前の段階(税引き前当期純利益)が赤字だと、法人税は納めなくてもよいことになるため、日本にある企業の7割ほどが赤字だといわれています。

 

このことを逆に考えてみてください。

 

赤字を出すということは利益が出ないようにするということです。赤字を出す対策は利益を出さないようにする対策、すなわち儲けないようにする対策なのです。その対策により会社が衰退していくのは明らかです。

 

一方、赤字であったとしても、基本は社長も社員もみな、一人あたり人件費を増やしたいと願っています。単純にいうと、給料・報酬を上げたいと思っています。

 

ただし、簡単に人件費を上げることはできません。

 

図で示した「経常利益」は事業を続けるための費用であり、借入金のある会社では返済の原資になる部分です。借入金の少ない会社でも、翌期に活かすために残しておかないといけないお金です。

 

そのため、人件費を増やすには「粗利益額」を増やす必要があります。売上高はそのままで粗利益額を増やすために、変動費を抑えるということになります。しかし、変動費は売上高の増減によって変動する費用ですから、単純に変動費を減らすという対応はできません。そのため、人件費を増やすという目標は達成できなくなります。

 

結局のところ、同じ事業をやっていて、少しずつでも粗利益額を上げるためには、小手先の数字の移し替えでは対応できないと考えるようにしましょう。

株式会社古田土経営 常務取締役

2005年に古田土会計公認会計士・税理士事務所(現・税理士法人古田土会計)に入所。現在は、同法人含むグループ企業の株式会社古田土経営の常務取締役を務める。経営計画と月次決算を主力商品とする古田土会計グループにおいて、営業活動することなく年間100〜150社の新規開拓をするスキームをつくり上げ、現在約2,300社の中小企業を指導。そのうち黒字率85.8%を実現している(日本企業の黒字率32.1%、平成27年度、国税庁調べ)。また、同ノウハウを同業者である会計事務所にも提供する会計事務所経営支援塾を運営する。

著者紹介

林徹税理士事務所/株式会社林総合税経 税理士・未来会計コンサルタント

平成17年税理士登録後、林徹税理士事務所及び株式会社林総合税経を設立。

著者紹介

望月経営会計事務所 経済産業省認定支援機関・経営コンサルタント・税理士
創業・ベンチャー支援センター埼玉 開業アドバイザー

平成20 年税理士登録後、望月経営会計事務所を開業。起業前から小さくても強い会社を作るコンサルティングを行い、起業前、起業後をトータルにサポート。

著者紹介

税理士法人新日本経営 代表税理士

会計事務所及び事業再生コンサルティング会社に所属後、平成19年、新日本経営会計事務所開設。平成20年より埼玉県再生支援協議会専門アドバイザーとして活躍する。税理士法人新日本経営は、会計・税務はもちろんのこと、金融機関に強い税理士が、顧問先の「黒字化支援」、「融資・銀行対策」、「経営改善・事業承継」等の経営問題に積極的に取り組んでいる。

著者紹介

リアン総合事務所 税理士・キャッシュフローコーチ®・SP融資コンサルタント®

大学卒業後、信託銀行に就職したが、金融ビックバンによる銀行の再編成を機に退職。退職後、税理士だった祖父への憧れから会計事務所で働きながら税理士資格の取得に励む。
苦節18年の歳月を要したのち合格し、念願の独立を果たす。

著者紹介

吉田一仁税理士事務所 ファイナンシャルコーチ®・税理士

大学卒業後、渋谷の大手会計事務所に4年半勤務し、税理士としての実務を積む。2005年1月、「吉田一仁税理士事務所」を開業。中小零細企業の社外CFO(財務幹部)として、「資金調達・資金繰りサポート」でお金を確保し、シンプルでわかりやすい「お金の見える化」でお金をコントロールし、成果の出る「経営コンサルティング」でお金を生み出すサポートをしつつ、経営者の意思決定を正しい方向に導くファイナンシャルコーチ®。

著者紹介

株式会社エム・エス・コンサルティング/公認会計士・税理士山口学事務所 公認会計士・税理士・AFP

1981年11月~1987年12月 、プライス・ウォーターハウス公認会計士共同事務所および監査法人朝日新和会計社(現、あずさ監査法人)に勤務。1988年1月 、公認会計士・税理士山口学事務所を開設。経営者の夢を将来ビジョンとして明確にし、そこに至る道筋を経営計画としてまとめ、会計情報を経営に活かして、「脱・公私混同」+「中小企業版PDCA」でゴールを目指す。

著者紹介

さくらみらいマネジメント株式会社/税理士法人さくらみらい国際会計事務所 公認会計士・税理士

夢ある未来の実現のために、経営計画書と月次決算書で中小企業の底力を高める会計事務所として経営支援を行う。

著者紹介

税理法人浜松合同会計わたなべ事務所 キャッシュフローコーチ ®・税理士

「数字だけ見ても分からない。思いだけでも社員は動いてくれない。」と悩む、中小企業の経営者、幹部の方に『お金のモヤモヤと、人のイライラをスッキリさせる、脱・ドンブリ経営のすすめ方』をアドバイス。

著者紹介

多和田会計事務所 代表税理士

2002 年、税理士登録後、多和田会計事務所を開業。脱・零細企業に向けて、「経営計画」「未来会計」に力を注ぎ、経営者のベストパートナーとして共に事業の発展に取り組んでいる。

著者紹介

笠井永寿会計事務所 税理士

平成21年税理士登録後、笠井永寿会計事務所を開業。利益を出す仕組みとして、経営計画書の作成を指導、作成した経営計画書に基づき月次決算を行い、次の対策をお客様と検討している。

著者紹介

櫻井孝志税理士事務所 税理士

中小企業・零細企業や個人事業主のメリットは、歯車ではない、転勤がない、定年がない。デメリットは、収入が少ない、福利厚生がない、マニュアルや研修制度がない。働き甲斐のある仕事について、収入が付いてくればよいと考え、中小企業にふさわしいPDCAサイクルの回し方を指南。

著者紹介

西川税理士事務所 税理士

「日本の中小零細企業を強くする」をモットーに、他とは違う超豊富な月次資料で説明。多様な提案も積極的に行っている。

著者紹介

岡本剛税理士事務所 税理士・経営計画コンサルタント・PDCAコンサルタント

平成6年4月岩水明税理士事務所に入社。平成25年2月岡本剛税理士事務所開業。大阪市北区の南森町から経営をフルサポート。うまくいく会社・社長がいなくてもスタッフが自ら動く会社のPDCA(仕組み)を作りもサポート。

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竹内総合会計事務所 所長・税理士・中小企業診断士・行政書士

ヤンマーディーゼル(株)に入社し原価計算・経理業務に従事した後、大手会計事務所に入所し税務部長として中小企業の財務・税務・資金繰り指導に従事。
その後、平成9年マーケティング系コンサルタント会社に入社するとともに同年会計事務所を設立し所長に就任。平成15年1月、竹内総合会計事務所として独立。
経営サポート内容
経営診断による問題・課題の整理→経営計画による経営目標の策定→月次決算検討会による進捗確認→人事評価による全員経営の実現。

著者紹介

進藤税理士事務所 税理士・TP-I(税務調査士)・所長

2000年に神戸市中央区において進藤税理士事務所を開業。本年で開業18年目。零細企業を中小企業へと成長して頂くために経営者とともに経営改善に取り組む。

著者紹介

佐々木会計事務所 ちいさな会社の経営参謀・税理士

公認会計士・税理士として、中小会社300社以上の経営指導を行ってきた実績を生かし、ちいさな会社、零細企業を経営と財務の両面からサポート。150年先まで成功し続ける強い会社へと導く。

著者紹介

金崎浩税理士事務所 税理士・行政書士・IT コーディネーター・ビジネスモデルデザイナー

1997年税務署退職、2002年税理士事務所を独立開業。いかにして未来に活力を与えられるかを念頭において、起業家の減少が歩止まりし増えていけるよう、経営者とともに進む。

著者紹介

加藤太一会計事務所 経営計画コンサルタント・公認会計士・税理士

代表の加藤太一氏が大手監査法人に勤務後、地元の北九州で開業。儲かる会社はどう動いているか、その様々な手法を、そのやり方をまだ知らない経営者に伝え、中小企業を元氣にすることを使命にサポート。

著者紹介

坂元公認会計士・税理士事務所 公認会計士・税理士

経営数字を使って社長とともにワクワクする未来を創る経営支援会計事務所として活動。漠然としたお金の悩みや社員との立場の違いからくる危機感のズレやギャップを次の2つのツールで緒に解消することを目指す。
● お金の稼ぎ方や残し方がわかる「月次決算書」
● 社員とビジョンを共有できる「経営計画書」

著者紹介

ちとせ会計事務所 所長税理士

平成6年4月クラヤ薬品(株)(現在の(株)メディセオ)に入社。病院・診療所営業担当(MS)として医薬品及び医療機器の販売を行う。平成8年6月税理士・不動産鑑定士事務所に入所。平成24年8月税理士・不動産鑑定士事務所の所長の死去により独立を決意、平成25年2月ちとせ会計事務所を開設し現在に至る。

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川代会計事務所 税理士

生前対策で節税、納税資金の確保、円滑な財産分割及び事業承継などをサポート。

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飯田隆一郎税理士事務所 税理士

月次決算書と経営計画書、月次会議で、中小企業の社長を全力でサポートしている会計事務所。どうすれば利益が出て、お金が残るかを一緒に考え、毎月のチェックで計画と実績の差を確認し、対策を考え、社長の夢の実現をめざす。

著者紹介

伊藤由美子税理士事務所 税理士・未来会計コンサルタント・経営計画コンサルタント

平成元年5月公認会計士事務所入所。平成7年12月税理士試験合格(税法:法人税、相続税、所得税)、平成8年8月税理士登録。平成9年4月税理士事務所開業平成9年7月TKC全国会入会。

著者紹介

連載「脱零細企業」を実現するための「経営カイゼン」マニュアル

9割が結果を出す! 小さな会社の脱零細マニュアル

9割が結果を出す! 小さな会社の脱零細マニュアル

飯島 彰仁,林 徹,望月 由美子,竹内 武泰,西藤 友美子,鈴木 丈彦,吉田 茂治,川代 政和,吉田 一仁,山口 学,舟生 俊博,鈴木 崇之,飯田 隆一郎,多和田 裕,笠井 永寿,伊藤 由美子,櫻井 孝志,西川 弘晃,岡本 剛,竹内 友章,進藤 和郎,佐々木 輝雄,金崎 浩,加藤 太一,坂元 隆一郎

あさ出版

社員10人以下の会社の今日からできる経営改善。 小さな会社が零細と呼ばれる状況を脱し、成長し続けるための必須ノウハウを、経験豊富な著者陣がわかりやすく解説します。

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