保証債務の履行に伴う「求償権」・・・行使不能の判定基準とは?

今回は、保証債務の履行に伴う「求償権」の行使不能の判定基準について解説します。※本連載は、税理士の松本繁雄氏の著書、『資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金』(経済法令研究会)の中から一部を抜粋し、土地・建物の譲渡により発生する「譲渡所得」の計算方法や課税方法などについて解説します。

条件に該当すれば、保証債務の履行による譲渡に準じる

(3)名目上の借入者の債務履行

 

農協から資金の借入をしようとする者(実質上の債務者)が農協の非組合員の場合には資金の借入ができないので、その者の代わりに、その農協の組合員(名目上の債務者)がその資格を利用して農協から資金を借り入れて、これを実質上の債務者に貸し付けたが、名目上の債務者がその農協からの借入債務を履行するために資産を譲渡しなければならなくなったときは、次の①~④のすべてに該当する場合に限り、保証債務の履行による譲渡に準じて取り扱われます(昭和54年直審5-22)。

 

①名目上の債務者の借入および貸付が債務を保証することに代えて行われたものであること(名目上の債務者が当初から貸し付けた資金の回収を意図していないと認められる場合は除かれる)

 

②実質上の債務者が、その貸付を受ける時において資力喪失の状態にないこと

 

③名目上の債務者が借り入れた資金は、その借入後直ちに実質上の債務者に貸し付けられており、その資金が名目上の債務者において運用された事実がないこと

 

④名目上の債務者が、その貸付に伴い、実質上の債務者から利ざやその他の金利に相当する金銭等を収受した事実がないこと

 

(4)債務処理計画に基づく資産の贈与

 

中小企業(資本金1億円以下)である内国法人の役員である個人で、その法人の債務にかかる保証人となっている者が、その有する資産でその法人に貸借権等を設定し法人の事業の用に供されていた資産を、その法人について策定された債務処理計画に基づき、平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間にその法人に贈与した場合には、次の要件を満たしているときに限り贈与はなかったものとして課税されません(措法40条の3の2)。

 

①その個人が債務処理計画に基づき保証債務の一部を履行していること

 

②その資産の贈与および保証債務の一部履行後においても、なお債務処理計画においてその個人に保証債務が残っていること

 

③その内国法人が贈与後においてもその贈与された資産を事業の用に供することが、債務処理計画で定められていること

主たる債務者の「資産状況」「支払能力」等を総合判断

(5)求償権の行使不能の判定

 

保証債務の履行に伴う求償権の行使ができなくなったかどうかは、主たる債務者の資産状況、支払能力等を総合判断して決められますが、次の事実が発生した場合には、求償権の行使ができなくなった金額とされます(所基通64-1・51-11)。

 

①更生計画の認可の決定があったことにより切り捨てられることとなった部分の金額

 

②特別清算にかかる協定の認可または再生計画の認可があったことにより切り捨てられることとなった部分の金額

 

③債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの、または金融機関の斡旋による当事者間の協議により締結された契約により切り捨てられることとなった部分の金額

 

④債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その貸金等の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し債務免除額を書面により通知した債務免除額

 

したがって、求償権が行使できるにもかかわらず、これを行使しなかったり、また、他に連帯保証人がいる場合に、その連帯保証人が負担すべき部分まで保証債務を履行し、それらの連帯保証人に対し求償権を行使しなかった場合には、その行使しなかった部分の金額についてはこの特例の適用は認められません。

 

なお、主たる債務者である法人の役員等が、その法人の債務にかかる保証債務を履行した場合において、その役員等が求償権を放棄した後もその法人が経営を継続していても、次の場合にはその求償権の行使は不能と判定されます。

 

①その役員等と金融機関等他の債権者との関係からみて、求償権を放棄せざるを得ない状況にあったと認められること

 

②その法人は、求償権の放棄(債務免除)をすることによっても、なお債務超過の状況にあること

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    昭和30年早稲田大学政治経済学部卒業。
    農林中央金庫勤務を経て、昭和50年税理士試験合格、税理士登録。

    著者紹介

    連載土地・建物の譲渡――譲渡所得の計算方法と税額計算

    本連載は、2017年7月6日刊行の書籍『資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金』(経済法令研究会)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金

    資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金

    松本 繁雄

    経済法令研究会

    ●平成29年度の税制改正に対応した最新版 ●日常の相談業務、窓口業務を展開するうえで必要な所得税の全てを網羅 ●随所に「申告書への記入」欄を設け、申告書の記入方法を具体的に解説 ●相談業務を展開するうえでの実務書…

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