今回は、保証債務を履行するために資産譲渡をした際に、課税の特例を受ける方法を解説します。※本連載は、税理士の松本繁雄氏の著書、『資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金』(経済法令研究会)の中から一部を抜粋し、土地・建物の譲渡により発生する「譲渡所得」の計算方法や課税方法などについて解説します。

「確定申告書」に特例の適用を受ける旨などを記載

前回の続きです。

 

(6)申告の手続

 

この保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の課税の特例を受けるためには、確定申告書、修正申告書により行う方法と、更正請求書による方法があります。

 

①確定申告書により行う方法

 

保証債務を履行した時において、主たる債務者がすでに倒産するなど求償権の全部または一部の行使ができないことが明らかであることが、その資産を譲渡した年分の確定申告期限までに判明した場合には、確定申告書にこの特例の適用を受ける旨その他財務省令で定める次の事項を記載して提出します(所規38条)。

 

㋑譲渡した資産の種類、数量および譲渡代金ならびに保証債務の履行に伴う求償権の全部または一部を行使することができないこととなった金額

㋺主たる債務者および債権者の氏名または名称および住所もしくは居所または本店もしくは主たる事務所の所在地

㋩資産の譲渡年月日および取得年月日

㋥求償権の行使ができないこととなった事情

㋭保証債務の履行に伴う求償権の全部または一部を行使することができないこととなった年月日

㋬その他参考となるべき事項

 

<添付書類>

㋑借用証書または保証契約書の写し

㋺代位弁済にかかる借入金受取書

㋩債務者または他の保証人に対する弁済請求書および求償権行使不能であることを証する書面(債務免除通知書)

㋥債務者、保証人が資力喪失の状況にあることを証する資料

求償権を行使できるかどうか明らかでない場合

②更正の請求による方法

 

保証債務を履行するために資産を譲渡した場合において、その確定申告期限までに求償権を行使できるかどうか明らかでないときは、一応求償権の行使ができるものとして通常の譲渡所得の計算を行い、確定申告をしなければなりません(所法64条3項・4項)。

 

そして、後日、その求償権を行使することができないこととなったときは、その事実が生じた日の翌日から2か月以内に更正請求書を提出して、譲渡した年分の所得税を減額してもらうことになります(所法152条)。

 

 

[図表]〔譲渡所得計算明細書〕「4.譲渡所得金額」欄の記入〔3面〕

本連載は、2017年7月6日刊行の書籍『資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金』(経済法令研究会)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金

資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金

松本 繁雄

経済法令研究会

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