今回は、未収の譲渡代金が貸倒れになった場合の収入金額について見ていきます。※本連載は、税理士の松本繁雄氏の著書、『資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金』(経済法令研究会)の中から一部を抜粋し、土地・建物の譲渡により発生する「譲渡所得」の計算方法や課税方法などについて解説します。

貸倒れによる譲渡代金の損失は「譲渡所得」から控除

1 譲渡代金の貸倒れ

 

譲渡所得の収入金額は、譲渡代金の授受があったかどうかに関係なく、原則として譲渡資産の引渡しがあった時点において収入すべき金額を計上しなければなりませんので、譲渡所得の収入金額には、未収の譲渡代金が含まれることになります。

 

この未収の譲渡代金が貸倒れになった場合には、譲渡所得の金額のうち、その貸倒れになった収入金額に見合う部分の所得はなかったものとされます。具体的には、次に掲げる金額のうち、最も低い金額に相当する部分の譲渡金額がなかったものとして取り扱われます(所令180条2項、所基通64-2の2)。

 

①貸倒れになった金額

 

②貸倒れが生じた直前において確定している譲渡所得が生じた年分の総所得金額、短期譲渡所得の金額、長期譲渡所得の金額、山林所得の金額、退職所得の金額の合計額

 

③②の合計額の計算の基礎とされる各種所得の金額

 

つまり、譲渡所得の譲渡代金の損失は、その譲渡所得が生じた年の所得が赤字にならない限度において、その年の譲渡所得金額から控除されることになります。

 

辞退した未払役員給与は、所得の計算上なかったものに

2 役員が未払賞与等の受領を辞退した場合

 

経営不振に陥った法人の役員が、次のような特殊な事情のもとにおいて一般債権者の損失を軽減するため、その立場上やむなく自己が役員となっている法人から受けるべき役員給与など各種所得の収入金額に算入されるもので、まだ支払を受けていないものの全部または一部の受領を辞退した場合には、その辞退した金額は、所得の金額の計算上なかったものとされます(所基通64の2)。

 

①その法人が、特別清算開始の命令を受けたこと

②その法人が、破産手続開始の決定を受けたこと

③その法人が、再生手続開始の決定を受けたこと

④その法人が、更生手続の開始決定を受けたこと

⑤その法人が、事業不振のため会社整理の状態に陥り、債権者集会等の協議決定により債務の切捨てを行ったこと

本連載は、2017年7月6日刊行の書籍『資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金』(経済法令研究会)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金

資産税の実務 不動産の取得・譲渡・賃貸と税金

松本 繁雄

経済法令研究会

●平成29年度の税制改正に対応した最新版 ●日常の相談業務、窓口業務を展開するうえで必要な所得税の全てを網羅 ●随所に「申告書への記入」欄を設け、申告書の記入方法を具体的に解説 ●相談業務を展開するうえでの実務書…

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