申告データの「異常値」を見ているKSKシステム
前回に引き続き、税務署がデータ管理に使うKSKシステムについて見ていきます。
KSKシステムでは、調査先は具体的にどのように選定されているのでしょうか。国税当局は調査先の選定方法について明らかにしていませんが、申告データに以下の①、②のような形で異常な数字が、すなわち“異常値”が見つかった場合に税務調査の対象になると一般には考えられています。
①売上等の数字が前年と比較して大きく異なる場合
売上や経費など申告書上の数字が、前年と比べて異常に増えている、もしくは減っているような場合に、コンピュータ上で“アラーム(警告のサイン)”が出て注意を促す仕組みになっている。
②業界内で比較して数字が大きく異なる場合
たとえば、同業他社と比較して、売上の割に人件費が多いようなケースなどで“アラーム”が出る。
それでは、申告データに①、②のような“異常値”が出るのを防ぐためには、どのような対策をとればいいのでしょうか。まず①については、売上の数字はそのまま決算書に示すしかないので“アラーム”が出ることを防ぐのは難しいかもしれません。
しかし、②については少しの工夫で異常値が出るのを防げる場合があります。たとえば、会社設立時とは主軸事業が変わってしまっているのに、申告書上は業種を同じままにしている企業があります(申告書では業種は番号で示されています)。
具体的にいうと、設立時には出版業として申告していたが、その後、広告業も行うようになり、今ではむしろそちらの売上の方が大きいような場合です。
このようなケースでは、出版業として同業他社と数字を比較されるとアラームが出るが、広告業として同業他社と比較されるとアラームが出ないということもあり得ます。そこで、調査対象に選ばれないよう、申告書上の業種を出版業から広告業に改めてしまうわけです。
このように、申告書で示している業種と現実に行っている業種との間に齟齬が生じているような場合には、現在の仕事の実態に合わせて修正することをお勧めします。
いつもと違う科目で処理した経費にも反応が・・・
それから、顧問税理士が代わったときにも、KSKシステムが反応することがあるようです。もっとも、それは「税理士が代わったこと自体」が理由ではありません。そもそも、税務当局のコンピュータに打ち込まれるデータに担当税理士の名前はないようです。
では、なぜアラームが出ることがあるのかといえば、新しい税理士が以前の税理士のやり方を踏襲せずに、申告書の科目を変えてしまうからなのです。
たとえば、それまでは外注費以外の科目で処理していた経費を、一律に外注費の形でまとめてしまえば、その額は大きく膨らむことになります。すると、コンピュータは、「前年に比べて外注費が異常に増えている」とアラームを発することになるわけです。
税理士が科目を変えるのは、「申告書の表示がより見やすくなる」「今までの取り扱いが不適切である」など、それなりの合理的な考えがあってのことでしょう。したがって、科目を変えることが好ましくないとは一概にはいえません。
しかし、科目を変えた結果として、税務調査の対象となってしまうことは極力避けたいはずです。そこで、もし新しい顧問税理士がどうしても科目を変えたいというのであれば、期中は科目を変えた会計書類で経理作業を行い、税務署に申告書を提出する段階で科目を例年通りの形に戻すことを検討してみるといいかもしれません。これなら申告書の科目は変わらないままとなるので、KSKシステムが反応することを防げるはずです。