前回は、経営者の不安を的確にサポートする「税理士コンサル」の強みを取り上げました。今回は、税理士がクラウド会計を味方につけて「コンサル力」を磨く方法を見ていきます。

クラウド会計の利用で、税理士の作業を時短化・効率化

さて、新たに経営的なコンサルティングへの取り組みを始めるに当たって、問題となるのは、これまでの記帳代行や申告業務といった会計関連業務をどうしていくかです。コンサルティングは繰り返し、継続的に顧客と対話をしていかなくてはならないため、時間がかかります。すでに会計業務で手一杯の場合、さらにコンサルティングを行おうとすると、時間が足りなくなる可能性もあります。その時間をどう確保していくかとなったとき、活用したいのがクラウド会計です。

 

第1章で、クラウド会計が税理士の仕事を奪う可能性があるとお伝えしたので、それを活用しろというのは矛盾しているように思われるかもしれませんが、実はクラウド会計は税理士にとっても強い味方になり得ます。

 

どういうことかというと、クラウド会計を利用することで、税理士自身の作業が時短化、効率化されるからです。クラウド会計で時短化された分、空いた時間を接客力の強化や、経営コンサルティングを磨く時間に当てればいいのです。現段階から単純作業をクラウド会計で済ませて効率化を図り、経営コンサルの仕事にシフトしていければ、ITの発達などに恐れることはありません。

 

もっと言えば、顧客自身にクラウド会計を使ってもらい、社内で自計化をしてしまえば、なお理想的です。会計業務の基本的なことは顧客のほうでやってもらい、税理士はチェックや最後の仕上げをするだけにするのです。そうすれば、さらに多くの時間をコンサルティングに充てられます。

進化し続けるクラウドを「自分に有利なように」使う

会計を自計化することには、顧客にとっても大きなメリットがあります。顧客自身が会社のお金の動きをリアルタイムで把握できるので、主体的に会計を考えていけるようになるのです。

 

これまで税理士が持ってくる決算書を待つだけだったときは、決算書を「決定事項」として受け入れるしかありませんでした。それが、自計化できるようになると自分たちで大まかな試算をし、「こういう決算書に着地させたい」というイメージに近づけることができます。

 

たとえば、「もう少し利益を減らしておきたい」と思えば、来期に予定していた設備投資を今期に前倒しして経費計上を多くするとか、逆に、「融資を受けたいから黒字決算にしたい」と思えば、経費計上を少なめにするなどのコントロールができるようになるのです。

 

クラウド会計ソフトは今後もどんどん使いやすく便利になっていきますから、これを使わない手はありません。要は、クラウド会計に脅威を感じて委縮するのではなく、その利点を〝自分に有利なように〞持っていけばいいのです。

 

ちなみに、私が特化して行っている家賃経営の分野では残念ながら、まだクラウド会計ソフトはほとんど利用できていません。システムが賃貸経営に合わせた仕様になっていないため、結局は手作業で細かい仕分けをしなくてはならないからです。ただ、今後、使いやすいソフトに改良された折には、私も積極的に取り入れていくつもりです。顧客にも勧め、できるだけ自計化ができるようにサポートをしていきます。

 

すでにクラウド会計ソフトが最適化されている業界や業種については、今すぐにでも採用すべきだと考えます。

「税理士」不要時代

「税理士」不要時代

渡邊 浩滋

幻冬舎メディアコンサルティング

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