賃貸経営では「手残りを貯める」という意識を持つ
では、デッドクロスを見越して、どのような戦略を立てたり、アドバイスをしたりしていけばいいでしょうか。ここでは、賃貸経営に特化した筆者のやり方を紹介します。
大家さんの場合、後々の税金や修繕積立金のために、手残りを貯めておこうというアドバイスをしなければなりません。
大家さんはアパートやマンションを建築するときに、資金繰りのシミュレーション表をハウスメーカーから見せられてはいます。それによると、収益は常に理想値で推移していき、借入金の返済に窮することもなく、手残りがマイナスになることもありません。
しかし、これは極端に甘いシミュレーションと言わざるを得ません。なぜなら、ハウスメーカー側が作って持ってくるシミュレーション表には、税金が考慮されていない場合がほとんどだからです。彼らの言い分としては、そもそも税金がどのくらいかかるのかは個人の所得によるので、計算に入れることができないと言います。
ただ、そのシミュレーションを真に受けて、多額の借金をして物件を購入してしまうと、いずれ手残りがマイナスになり、大家さんは困ってしまいます。
こういうケースでは、私のほうで改めて現実を正しく反映したシミュレーション表を作り直し、資金繰りの改善に向けて、経費の見直しや節税対策、返済計画のリスケジュールなどを行っていきます。必要に応じて、銀行の借り換えを促すこともあります。
それでもアパート経営そのものは右肩下がりが運命づけられているビジネスモデルです。今後は現状維持か、下がっていくかだけなので、慎重に将来を検討して対策を練っていかねばなりません。
経営を安定させる「ストック型のビジネス」
賃貸経営以外の一般的な業種で経営の健全化を考えるとしたら、フローとストックの考え方をベースにするといいでしょう。
ビジネスモデルには「フロー型」と「ストック型」があります。
フロー型というのは、単発のビジネスが断続的に続いていくモデルです。パン屋でいうと、お客さんがやってきて、パンをいくつか買い、お金を支払って出ていくことで一つのビジネスが完結します。パン屋の経営というのは、基本的にその繰り返しです。このように、一つひとつのビジネスが断続的に続いていく中で、利益を上げていくのがフロー型です。
これに対して、ストック型というのは、一つのビジネスがずっと継続していきます。たとえば、通販などで飲料水を定期購入する場合などをイメージするとわかりやすいでしょう。お客さんは年間いくらという契約料を支払い、定期的に自宅に水を届けてもらいます。お客さんが契約を解除しない限り、企業には毎年契約料が入ってきます。
フロー型は客の多い日も少ない日もあって、パンの売れ行きがその日ごとに違うため、収入が不安定になりがちです。それに対して、ストック型は顧客が契約を解除しない限り、定期的に収入が入ってくるため、収益が安定しやすくなります。
つまり、ストック型のビジネスの比率を高くしていけば、経営的には安定していきます。いかにストックを多くしていくか、リピート客を増やしていくかというのが、コンサルティングの方向になります。
この点でいえば、税理士も顧客から年間の顧問料をもらうストック型のビジネスです。いつ、どこで起こるかわからない相続案件よりも、定期的に顧問料が入ってくる企業のコンサルティングを多く行ったほうが、安定的に経営をしていけます。