前回は、経営者たちが求めている「税理士による経営コンサル」とは何かを説明しました。今回は、なぜ多くの税理士は「経営コンサル」をビジネスにしないのかを見ていきます。

実務から離れるうちに「経営感覚が鈍る」税理士

経営者たちのニーズにもかかわらず、多くの企業で税理士による経営コンサルティングが行われていないのは、なぜなのでしょうか。税理士側の事情として考えられる理由は二つあると思っています。

 

一つは、これまでにも言ってきたことですが、長年単純作業しか行わないなど古い業界体質に染まっていて、すでに数字を読み取る力もなくなり、コミュニケーション能力も磨かれていないからです。

 

特に大手などでは長期間、実務的に学ぶ機会がなかったり、申告業務等を繰り返してきたりして、経営感覚について忘れてしまうことは十分に考えられます。また、資格のうえにあぐらをかいて実務は職員にすべてやらせてきたという税理士も、何をアドバイスするべきかわからなくなっている場合があるでしょう。実は私が、同じ税理士相手に資金繰りのアドバイスをする機会もあるくらいです。ですから、実務から離れているうちに経営的な勘やセンスが鈍っていってしまうというのは、現実としてある問題です。

顧問料を下げて客を取るだけで満足するケースも

もう一つは、コンサルティングをする能力はあるものの、自分が楽なほうに進んでしまう場合です。顧問料を下げて客が取れるなら、それでもいいと満足してしまい、それ以上のサービスをしないのです。

 

この場合はそもそものコンサル能力はあるわけですから、本人がコンサルティングの重要性に気づき、意識改革さえすれば、次のステップへと踏み出すことができます。ぬるま湯に浸かっているうちにコンサルティングの腕が鈍ってしまわないよう、早めの対策が必要です。

 

経営コンサルを行うのであれば、別途料金をいただくことはもちろんあっていいでしょう。というよりも、むしろコンサル料をいただくのがビジネスとしては当然です。ただ、料金を取る・取らないにかかわらず、今後は経営コンサルティングができない税理士は勝ち残っていけません。

「税理士」不要時代

「税理士」不要時代

渡邊 浩滋

幻冬舎メディアコンサルティング

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