多くの経営者たちが必要としている経営コンサルティングですが、そこに力をいれている税理士はごく一部にすぎません。本連載では、税理士による経営コンサルティングの重要性とその具体的な手法についてご紹介します。

一人で何役もの仕事をこなす中小企業の経営者

現状、税理士業界を見渡してみると、経営コンサルに力を入れている税理士はごく一部にすぎず、ほとんどの税理士がその重要性にさえ気づいていないように感じます。しかし、経営者は身近な存在である税理士から、経営に役立つアドバイスや指針が欲しいと思っている場合がほとんどです。

 

なぜなら、経営者とりわけ中小企業の経営者は「孤独」になりやすいからです。

 

大手の企業の場合、経営は経営陣によって行われます。代表取締役をサポートする取締役たちがいて、みんなで知恵や力を出し合って話し合いながら経営を決めていけます。

 

それに対して、中小企業の経営者は自分一人で経営をしていかなくてはなりません。しかも従業員が少ないこともあって、多くの場合、彼らは現場のプレーヤーも、営業マンも、社長業も・・・と一人で何役もの仕事をこなすことになります。「自分が現場にいないと仕事が回らない」「社長室にいたって一円にもならない」という社長が世の中にはたくさんいます。

 

そのように現場仕事のほうに意識も労力も時間も費やすことになりますから、どうしても会計・経理は疎かになりがちです。よく「日本の中小企業の社長は数字に弱い人が多い」といわれますが、それはこうした中小企業ならではの事情が少なからず影響していると思われます。

 

数字に弱い社長にとって、経営は荷が重いものです。経営というのは決算書や試算表の数字のうえに成り立つものだからです。たとえば現状の資金繰りで問題はないのか、今後の資金調達で課題となるものは何なのかといった財務的な問題や、時代にうまく乗っていけるのか、競合他社との差別化はできるのかといった事業の方向性などがあります。つまり、決算書や試算表の数字が読めないと、先を見通した戦略的な経営は行っていけず、企業としての継続が困難になってしまうのです。

何か経営的な助言がもらえたら…経営者たちの嘆き

多くの社長にとって、顧問税理士は最も身近にいる「数字に強い人」です。その信頼は、おそらく顧問税理士自身が思っているより大きいはずです。実際には顧問税理士への遠慮などもあって、なかなか口には出せないことも多いのですが、経営者たちは心の奥では「プロとしての立場から、何らかの経営的な助言がもらえたら」と期待しています。単に「今期の決算ができました」という報告だけを受け取りたいわけではないのです。

 

実際に、私も賃貸経営の相談相手としてお客様と接してきましたが、今までの顧問税理士が経営に対して何のアドバイスもしてくれないと嘆いてやってくる方がたくさんいます。税理士からのアドバイスを求めているのにもらえていない経営者が多いという現状が、浮き彫りになっています。

 

経営者は自分の家族、従業員やその家族、取引先など、多くの人の生活や人生を背負い、ときには自らの懐から資金を捻出したり、自宅を担保に入れて借金をしたりしなければならない立場にあります。その重い荷物を一人で背負うのは、とても大変です。そばにいて荷物を軽くする方法を教えてくれたり、荷造りを工夫して背負いやすく整えてくれたりするアドバイザーがいたら、こんなに心強いことはありません。

 

我々税理士は、そういった多くの経営者の中にある潜在的なニーズに応えていく必要があります。そのためにはコンサルティングの腕を磨き、経営者の役に立つアドバイスやサポートを提供していくべきでしょう。

「税理士」不要時代

「税理士」不要時代

渡邊 浩滋

幻冬舎メディアコンサルティング

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