前回は、後継者育成と事業承継を成功に導く「タイムスケジュール」について解説しました。今回は、後継者を育成する最初の一歩について見ていきます。

まずは現社長と後継者で「会社の現状」を共有

本連載では、育成ステップの2段階目として「現状分析」について説明していきます。

 

会社を経営するためには、その会社の経営理念や外部環境、内部環境などを把握しておく必要があります。現社長はまず後継者と会社の現状を共有しなければなりません。

 

会社のヒト、モノ、カネ、情報など、社長は会社経営に必要なことは把握しています。中小企業の場合、一人の社長によってカバーしている範囲が広く、社長一人が多くの情報を抱えていても経営は成り立ちます。そのため、会社のすべての状況と情報を可視化したような書類等は作成されていないことが大半です。社長が経営の舵取りを一手に担っている限り、自分以外の人に細かく共有する必要性に迫られないため、文書化する機会がないのです。

 

ビジネスの世界では昔から、ほうれんそう(報告・連絡・相談)が重要といわれていますが、中小企業のオーナー社長は一般的に、誰かに報告したり、連絡したり、相談したりということをあまり行いません。しかし後継者を育成するためには、社長は自分の頭の中にある情報を後継者に伝えたり、社内で共有したりする作業が不可欠です。

最初の情報共有は「A4用紙1枚」の分量からスタート

私が後継者との情報共有を始めるにあたり使用してもらっているのが下図の用紙です。A4用紙1枚ですが、最初の一歩となるツールはこの程度が適当でしょう。

 

[図表]A4用紙1枚に現状をまとめる

 

この用紙に収まるくらいの分量で、「事業承継のタイミング」「現在の姿」「SWOT分析」「5年後のありたい姿」「アクションプラン」の5項目を現経営者が埋めていきます。その内容を後継者に説明し、会社の現状を確認、共有するのが後継者育成のスタートです。

 

ここで現経営者の書く内容は、詳細なものでなくて構いません。最初から作り込もうとすると考え込んでしまって時間だけが過ぎてしまうので、思い付くことを箇条書きでメモする程度の心構えでよいでしょう。

 

次回以降、5つの項目について順に解説します。

オーナー社長の後継者育成読本

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久保 道晴

幻冬舎メディアコンサルティング

経営者の高齢化が進む中で、後継者不在に悩む企業が増えています。 適任者が見当たらない、子どもに継ぐ意思がないなどの理由で次期社長の目途が立たず、やむなく廃業を選択する経営者も少なくありません。 本書はこうした悩…

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