様々な質問にもスムーズに回答できる
対話型の営業とeラーニングとの比較をしてみましょう。
eラーニングでは道筋の決まったコンテンツが用意され、学習者はそれに沿って学んでいきます。ですので、話が決まった方向に流れていきます。
一方、営業活動の中では話の流れは方向性があるとしても、範囲は決まっておらず、途中であちこちに話が展開しながら、立ち止まったり理解を深めたりするために会話のキャッチボールが行われています。ことに初めての取引では、相手を理解するための会話に長く時間がかかります。
このときに理解を深めるための流れは対話型のコミュニケーションであり、一方通行ではありません。
iPadが発売された際には、皆さんが電子書籍を意識し、一方向の流れでしか使えない電子カタログのようなビュアー型ツールを採用しました。しかし、どの企業でも早々に効果を出せないことに気がついたと思います。
ビュアー型ツールは話に合わせて中を見ようとすると、いちいち目次に戻るか、人の記憶に頼って該当するページを探すしかありません。多くの提案書も同じで、やはり頭から順番に見ることを前提につくられています(図表1)。
[図表1]ビュアー型のモデル
講演のように一方的に壇上から話をするときは、パワーポイントでつくった資料をプリントして配ってもかまわないでしょう。あるいは「今日のおすすめはこれです」という営業スタイルなら、頭から順番にページを見せながら聞いていくだけで済むかもしれません。
しかし課題解決型の営業スタイルでは、一直線の会話に終止することはあり得ません。ネタ振りから始まり、どう思いますかと問いかけをして、そこでどんな答えが返ってくるかは相手によっても変わります。それに対応した説明をするためのコンテンツを提示し解決策を提案し、事例の説明をして話を締めくくるというのがひとつのパターンになります。
このような現実の場面で使える対話型ツールの流れを模式図にすると、ビュアー型と違って途中で分岐していきます(図表2)。ここでやっていることは、インターネットで見たいところにハイパーリンクで移動するのと似ていることに気がつくのではないでしょうか。
[図表2]対話型のモデル
見せたいものになかなかたどり着けないビュアー型と比べると、あるスライドからリンクでほかのスライドやコンテンツに飛んで、また戻るのを繰り返すだけで、かなり流れがスムーズになります。対話型ツールでは、このリンクをいかに効果的に使うかが使い勝手をよくするひとつのカギとなります。
話の内容が濃くなり、合意までの時間も短縮可能
対話型の営業パターンは、セリング・スキル・モデルと呼ばれます。そのセリング・スキル・モデルを可能な限り自動化するのが、対話型ITツールといえます。
製薬会社の営業では、ドクターに医薬品を紹介するという主目的がありますが、そのために患者の症例を細かく聞いてデータベースからそれに対応するスライド・動画・データなどを提示したり、具体的な治療例があるコンテンツを呼び出すという寄り道があります。
あるいはデータを入れるとグラフが出てきて、こういう治療をしてはどうでしょうかという話になるかもしれません。これはワン・ペイシェント・ディテール(患者ごとの対応法)と呼ばれています。いわゆる個別提案です。
さらにそれらの提案事例がログとしてたまっていれば、寄り道をするごとにそこにはどういうコンテンツを使うと効果的だとAIから教えてもらって営業担当者を補助することも可能になるでしょう。
すると同じ訪問時間でも話の内容が濃くなり、必要な合意までたどり着ける時間が短くなって、次のステップまで早く話を進められるでしょう。