担当者の4割が、訪問回数を25%減らすことに成功
タブレット端末を使った対話型ツールは、今のところ「インタラクティブプロ」だけしかありませんので、この製品を導入して営業の効率アップに成功した製薬会社の例を紹介します。
製薬会社のビジネスモデルは、同じ薬が継続して使われることを前提にしています。もちろん新薬も売り込みますが、基本的には既存の薬について新しい知見や使用例を紹介することを目的としたルートセールスになります。
薬はスペックだけで売れる商品ではありません。厚生労働省の許認可の対象になっており、発売後様々な臨床データを集め、その解析結果を随時医師にフィードバックしていく必要があります。また患者への適正使用を推進していくのが製薬会社の営業担当であり、医薬情報担当者としてのMRの役目です。そのために新しい情報をなるべく多く用意し、医療機関を訪問しています。
製薬会社から医師への伝達する情報は専門性が高く、ある製品について伝えたい情報をすべて伝えるまで何度もの訪問回数が必要となります。複数の製薬会社のiPad導入時の評価結果では、1回当たりの面談時間が延び、結果深い情報まで理解され、訪問回数を減らすことができました。
ある会社の事例では、営業担当者のうち40%が訪問回数を25%減らすことができました。その結果全体では同じ効果を上げるための訪問回数が8%減るという実績を残しました(以下の図表1を参照)。
[図表1]訪問回数の減少
これは動画や各種コンテンツを現場で適宜使えたために、メッセージが以前よりもより伝わりやすくなったからです。また質問があるとコンテンツ全体を検索してその場で対応でき、会社に帰って調べてから回答しなくても済みます。これは宿題の持ち帰りを減らせることになり、特に50代のMRに好まれました。
その結果、一回の面談の密度が濃くなり、ひとつの話を理解してもらうまでの回数が減った結果、年間に4回程度しかできなかったひとつのメッセージの伝達・理解が、5回までできるようになりました。これはマーケティングとして大きな進歩です。
ドクターが関心を持ち、面談時間が延びたMRの例も
MRは一度の面談時間が極端に短いのですが、その面談時間を見ると、全体の60%の面談が、1回平均4分間から7分間に延びました(以下の図表2を参照)。それまでひとつの話を完結するまでの訪問回数を減らせなかったのは、長く話す時間がなかなかとれなかったからです。ドクターは忙しいので、訪問しても廊下での立ち話で終わってしまいがちです。
[図表2]面談時間の拡大
その状態から面談時間を長くできたのは、ドクターが課題提示の話の内容に興味を持ってもらえるようになったからです。興味を持ったことに対しては、人はより早く、深く知りたいと思いますし、理解できるものです。それがこの4分間から7分間へという数字の変化から読み取れます。
また一回の時間が延びた分、目的を果たすまでの回数が減ることにもなりました。長い時間MRと話し込むのは、ドクターの満足度が高まったことの表れでもあります。この製薬会社は、「インタラクティブプロ」を導入した結果、目に見えた効果を出したことが評価されて、2012年度にグローバルのマーケティング賞を受賞しました。
別の製薬会社では、やはり同様の目的で導入したところ翌月から売上が伸びました。
医薬品は継続販売が基本で、同じ薬を使う患者数が限られているので、営業成績が伸びるには時間がかかるものです。それが急に改善したのは、MRがきちんと回っていなかったか、訪問先でゆっくり話をしてもらえていなかったのではないかといった理由も考えられます。導入して説明が分かりやすくなったからプラスの効果があったと、その会社は評価しました。
製薬会社では営業活動の効果検証の指標に外部調査データを活用します。対話型のコンテンツを企画し、営業施策として実行したケースについては、数千人規模から最大では4万人の顧客を対象にして実施したもので明らかな改善効果が見られました。
興味のある話をしないでただ回ってくるだけの営業担当者はなるべく早く追い返してしまいたいと思われてしまっているでしょう。おもしろい、興味のあるネタを営業担当者間でシェアし、顧客には「いつもいい話を持ってきてくれて、質問すれば満足できる答えをすぐに返してくれる」と思われるように変われば、顧客の方からいろいろな案件の声がかかるようになるのではないでしょうか。