ITツールの利用率が100%だったのは「50代」
これも製薬会社の事例ですが、50代、40代、30代、20代のMRにタブレット端末を導入し、どのように利用しているかを年齢層別に調査したことがあります。
ITツールを使いこなすのは若い世代が得意なはずですが、この調査では意外にも50代が営業活動での利用率が100%を記録し、早々に売上もアップするという結果になりました。
50代になると知識が豊富で、タブレット端末にある過去のコンテンツの中身を理解していましたし、タブレットが配付される前までは手持ち資料がなくても話ができたほど説明のしかたには長けています。
よく知ったコンテンツの所在が分かりやすくなったので、便利なツールとしてすぐ受け入れられ、顧客の理解をさらに進められたのでしょう。
一方で20代では、30代社員が教育されてきたコンテンツを持つことで、その知識をわずか1カ月でかなり習得することができました。こちらは知識を身につける時間を短縮する効果があったわけです。さらにコンテンツの活用方法を覚えて、動画を使ったロールプレイの訓練を加えれば、より成長のスピードが速まるでしょう。
このように世代別で異なるメリットがあることが、調査をしてみて分かりました。40代と30代はその両方の効果があり、利用率は全体を通じて90%台でした。
タブレット端末を持っているMRを対象にした別の調査では、タブレット端末をまったく使わない、あるいはあまり使っていないと回答した比率が40%に達しました。それに比べると非常に高い数字です。
単にコンテンツが入っているだけではだめで、必要なときに探し出せることがなければ活用に至らず、結局鞄の中にしまったままになるということだと思います。
コンテンツの共有で、全世代の能力を「底上げ」
似たような例ですが、ある金融機関では、営業担当者が20代から30代と、40代から50代の2層に分かれているという話を聞きました。20代から30代の層は、営業資料はきれいにつくるがうまくしゃべれない。40代から50代の層は、資料はつくれないが話はできるというのです。
なんとか両方を底上げしたいというのですが、今のMRの調査結果がほかの業界でも応用できるのではないでしょうか。年長の世代は資料を自分でつくらなくてもコンテンツが端末に用意されていればすぐに使いこなせるので、営業活動の場で蓄積された経験が生きてきます。若い世代は必要な知識を短時間で吸収できます。
いずれにしても、全社的なコンテンツの共有によって、違った世代の人でも同じ目線で営業ができるようになります。それは世代間の相違だけでなく、能力の差や得手不得手の違いも埋めていくことになるでしょう。
ただし営業担当がばらばらにコンテンツを持っている状態では、営業部門の底上げはできません。