タブレットの活用で営業の「双方向の対話」を支援
私は2010年に今の会社を起して「インタラクティブ プロ」を開発しました。その頃はiPadを持って出かけると、人に見せただけで話題になりました。まだタブレット端末が珍しかった頃で、半年ぐらいは会話のきっかけに使えましたが、もちろんそのために訪問先で様々なコンテンツが利用できるツールをタブレット用に開発したわけではありません。
また、単にカタログのページをめくって見せて回るためでもありません。カタログ販売をしている会社にも営業担当がいますが、例えば取り扱っている文房具の分厚いカタログを持ち歩いて、お客さんにこれですねとページを開いて説明することはまずありません。一方的に見せるだけなら客先に置いてもらって、このページを見てくださいと連絡すればいいのです。わざわざ出かけていくまでもありません。
営業担当が訪問するのは〝双方向の対話〞を行うためです。多少なりとも経験のある営業担当者であれば〝一方的な説明〞スタイルではなく、顧客の課題を解決するための対話型営業活動を目指しています。
顧客から課題を引き出し解決をすることが後々の信頼につながり、何かあったらその営業に聞けば解決できると思ってもらえることになり、結果、売上は自然とついてくるのを知っているからです。これはタブレットがなかったときから長らく行われてきたことです。
顧客へのプレゼンテーションは、会議室で一方的に見せる形でしばしば行われます。しかし対話の中で行われるネゴシエーション段階のプレゼンテーションの方がより重要です。その場合、ビュアーとしてではなく、対話に使えるツールになっていなければ、タブレット端末を持参する必要はないのです。
では、タブレット端末が双方向のやりとりを支援するツールとなるためには、どのような要件を備えていなければならないでしょうか。
まず、顧客との会話で出てくるであろう自社関連の多様な種類のコンテンツを、可能な限り数多く収めていることです。
コンテンツの種類としては、営業のためにつくった資料だけでなく、聞き取りの結果を記録するツールやプレスリリース、製品紹介、社外の関連情報などもあります。ファイルの種類もPDF、パワーポイント、ワード、動画、ウェブサイトに掲載された事例集のようにHTMLで記述したもの、プレーンテキストなど多種多様になります。
本連載では、営業現場でなぜこのように多種多様なコンテンツを利用すると効率的なのかについて、順を追って述べていきたいと思います。
様々なコンテンツを「ひとつのツール」で扱う
訪問先で、次の資料を探すのに時間がかかっていては、沈黙の時間が増えて対話が盛り上がりません。ですから営業担当は多種多様なコンテンツの所在や関連性を、すぐに把握できる必要があります。そのためには、すべてのコンテンツをひとつのツールで取り出せるようになっていなければなりません。
iPadが発売された当初、多くの導入企業では多数のアプリを個別につくりました。私の知るいくつかの会社では、コンテンツを表示するためのアプリを20種類以上開発していました。
その結果、まずアプリ間のユーザビリティーの違いにユーザーはついていけませんでした。これは自社のウェブサイトの中でデザインがまちまちになっているのと同じです。それでは最初から使ってもらえないことを私たちは知っていました。
しかもこの多数のアプリは、企業が継続して利用することを考えて作られている物はほとんどなく、OSがバージョンアップするたびに動かなくなります。すなわち都度メンテナンスが必要となり、保守費用が増大していくことを意味します。これも当初から想定できていたことです。
弊社にもiPhoneやiPadのアプリ制作の話がたくさん来ました。紹介してくださった多くの方々には感謝していますが、この2つの結果が想定できていたので、アプリの開発ではなくこうした問題が初めから生じない仕組みをつくるために企業向けソリューションである「インタラクティブ プロ」の開発に専念しました。