前回は、「シニア人材」雇用が進むことで、日本全体が元気になる理由を説明しました。今回は、シニア人材には「ボランティア活動よりも仕事」が良い理由を探ります。

ボランティアにはない「責任の重さ」がやりがいに

「社会に貢献するなら、仕事ではなくてボランティアのほうがいいのではないか?」という考えもあるでしょう。私は仕事のほうがいいと考えています。

 

最近では、災害の被災地などでボランティアをしている方の様子をテレビでよく拝見します。自分のお金と時間を使って被災地へ行き、被災者のために働くのは、確かにすばらしいことです。私は、お金のためではなく自分の信念から人のために働くことを、決して否定するわけではありません。

 

ボランティアと仕事の大きな違いは、責任の重さです。報酬が発生しない分、残念ながらボランティアのほうが責任は軽いと思います。熱心にやっている方もいますが、集合時間に遅刻したり、当日に連絡もなく参加しなかったりする方もいるという話も聞きます。やはり、どこかで「お金をもらっていないのだから、これぐらいのことはいいだろう」という甘えが出るのかもしれません。

 

また、ボランティアは単発で参加する方が多いので、持続性が弱いという欠点があります。なかには、何年も続けられている方もいると思いますが、震災のボランティアは短期間の参加がほとんどでしょう。

 

一方、仕事の場合は、本人だけでなく会社にも責任が発生しますから、いい加減なことはなかなかできないものです。遅刻や無断欠勤などもってのほかですし、他の社員にも迷惑をかけるので途中で投げ出せません。そういう責任の重さは、ボランティアではとても味わえない良い刺激になるし、やりがいにもなるのです。

給料を稼ぎ、使うことが「社会貢献」につながる

これは私の印象なのですが、ボランティアでいろいろな活動をしている人たちの中には、人間関係がうまくつくれなくて孤立してしまう人が結構な割合でいるのではないかと感じます。高齢者でも人間関係がうまくつくれる人はボランティアではなく、会社で仕事をして活躍できる人が多いでしょう。

 

ボランティアもいいことですが、もっと積極的に周りの人とつながってネットワークができれば、もう少し広がりができるのではないかと思います。

 

また、企業は直接顧客の役に立つかだけではなく、収益を上げて税金を納めることで国と社会にも貢献しています。雇用も社会貢献になるのです。

 

そのような観点から見れば、万年赤字の企業は社会貢献をしているとはいい難い部分もあるでしょう。企業は黒字になれば税金を納める。それが世の中のためになっています。税金は国や地方自治体からあちこちに分配されて社会インフラなどに使われているので、社会への貢献度という意味では非常に大きいのです。

 

ボランティア活動には税金がかかりませんから、そういう点では社会への波及効果は小さいといえます。

 

給料を稼いで、そのお金を使って大きな買い物をしたり旅行に行ったりすることも、もちろん経済効果の一つです。やはり会社で働くほうが、さまざまな社会貢献につながっているのではないでしょうか。

本連載は、2017年5月29日刊行の書籍『シニア人材という希望』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

シニア人材という希望

シニア人材という希望

中原 千明

幻冬舎メディアコンサルティング

超高齢社会の到来とともに、日本人の働き方は大きく変わる――。 都市銀行でマネジメント職を歴任。定年後に起業し、多数のシニア人材を雇用する経営者が語る“新しい労働の在り方"とは? 2013年4月1日、高年齢者雇用安定…

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