前回は、シニア人材が「生涯現役」でいるために必要なことを紹介しました。今回は、定年後に実際に起業した著者のエピソードを見ていきましょう。

公認会計士から「会社を設立しましょう」との誘いが

ここで、私自身についてお話ししましょう。

 

私が「基金運営研究所株式会社」という会社をつくったのは、銀行を定年退職したあとですから、60歳の時です。

 

私は銀行に在職していたときから、親しかった公認会計士と「定年になったら、こういう会社をやる」と話したりしていたのですが、銀行は競争社会でやはり大変だったので、辞めてから5年くらいはのんびりしようと思っていました。

 

ところが、私が退職してすぐに、その公認会計士が司法書士を連れてきて、「会社を設立してください」「こういう構想を話していたじゃないですか」と言ったのです。

 

彼には、当時私が考えていたビジネスモデルや理想の会社のあり方を語っていたのですが、実際の気持ちとしては忘れられても構わないと考えていました。ところが、彼はきちんと覚えていてくれて、私のところへやってきたのです。

 

私は、自分で言ってしまった手前、「やらない」とは言えませんでした。それで急いで準備をして、約2週間で会社を立ち上げました。人間というのは追い詰められたほうがいいときもあるのでしょう。

 

その会社へ最初に来てくれたのが、私と同じ60歳の男性です。彼はアクチュアリー(年金数理人)という資格を持っていて、2人でスタートしました。その後、証券アナリストの方にも来ていただくことになりました。

 

私がやろうとしていたのは、厚生年金基金の制度や運用に関する相談・助言を中心とした業務や資産運用に関するアドバイスだったので、どうしても専門性の高い人材が必要でした。

 

しかし、その分野のスペシャリストで30代、40代の人は、だいたい外資系の企業や信託銀行の運用関係、生命保険会社などでバリバリ働いています。そういう若い人に来ていただいても、私の会社では今までの職場と同じぐらいの報酬は出せません。

 

だから、もう少し上の世代で「定年退職したけれど、まだちょっと何かやりたいな」という人を集めることにしたのです。報酬は若いときの10分の1くらいになる可能性もあったのですが、そういうことも理解してもらえて、いったんリタイアしたけれど、まだまだやる気がある人材に声をかけ始めたのが、シニア人材を採用することになったきっかけです。

 

だから、最初からシニア人材の受け皿になるような会社をつくろうと思っていたわけではなかったのですが、自然と60歳以上の人材が集まりました。2016年の6月までは70歳の社員も働いていました。

様々な能力を持った人材が集結…何でもやる会社に

ところが、厚生年金基金がだんだんと解散するようになって、社会全体のパイが小さくなってきました。そのため、厚生年金基金関係の仕事だけでは、やっていけなくなったのです。

 

しかし、せっかく来ていただいた方に「もう結構です」と辞めてもらうわけにはいきませんから、「これだけ人が集まったなら、なんでもできるだろう」と考えたのが、「CN総合コンサルティング」という会社です。

 

私には、この会社で何をやりたいという特定のビジネスモデルはありませんでした。反対に、「とにかくなんでもやろう」と思っていたのです。

 

そのとき会社には宅地建物取引主任者の資格を持っている社員が4名ぐらいいました。それなら不動産取引ができます。それから、税理士も弁護士もいました。それなら相続対策もできるな、と思いました。

 

さらに、保険の代理店をやっていた社員もいたので、「じゃあ生命保険も扱えるな」と、そうこうするうちになんでもできる会社が出来上がったのです。

本連載は、2017年5月29日刊行の書籍『シニア人材という希望』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

シニア人材という希望

シニア人材という希望

中原 千明

幻冬舎メディアコンサルティング

超高齢社会の到来とともに、日本人の働き方は大きく変わる――。 都市銀行でマネジメント職を歴任。定年後に起業し、多数のシニア人材を雇用する経営者が語る“新しい労働の在り方"とは? 2013年4月1日、高年齢者雇用安定…

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