前回は、賃貸併用住宅の土地選びで注意したい、区域区分のルールを取り上げました。今回は、住宅建築の可否を決める、建築基準法等のルールを見ていきます。

一つの敷地には原則、一つの建物しか建設できない

用途にかかわらず、そもそも建物を建設できるか否かが問題になることもあり得ます。それは、建物の敷地と道路との関係によるものです。

 

建物の敷地と道路との関係を定めている建築法規上のルールでは、敷地は道路に接していないといけません。なお建築基準法により、建築物が接する道路の最低幅員は4メートルと定められており、一つの敷地には原則、一つの建物しか建設できません(図表1)。

 

例えば、道路に接した奥行きの深い土地の奥の方に建物を建設したとしましょう。建物と道路との間は、空き地の状態です。次にその空き地部分をまるまる利用してまた別の建物を建設するとします。それは仮に物理的には可能だとしても、建築基準法上のルールでは認められません。一つの土地に二つの建物を建設すると、もともと一つだった敷地を二つに切り分けることになります。そうすると、奥の方の建物の敷地は道路には接していないことになってしまうからです(図表2)。

 

建物の敷地と道路とが、どの程度接しているかも問われます。建築基準法上の接道義務により、敷地と道路とが接して第いる間口は最低でも2メートルは必要です。ただし建物の用途や規模によっては、それ以上の長さを自治体が条例を通じて求めることがあります。

 

[図表1]建物敷地と道路との関係

 

[図表2]建物敷地と道路との関係

建築物の規模に応じて「間口」が定められている

川崎市の例を挙げましょう。同市の条例では、多数の人が出入りする建築物、不特定多数の人や高齢者等が利用する建築物、多数の人が生活を営む建築物等について、避難および通行の安全性を考慮し、その建築物の規模に応じて、敷地と道路とが接している長さ(間口)を定めています(図表3)。

 

床面積200平方メートルを超え、同300平方メートル以内は、3メートル。床面積300平方メートルを超え、同600平方メートル以内は、4メートル。床面積600平方メートルを超え、同1000平方メートル以内は、5メートルです。

 

[図表3]川崎市の建築基準条例

出所:川崎市ウェブサイトをもとに作成
出所:川崎市ウェブサイトをもとに作成

いわゆる「二項道路」には建築できない

しかも、この「道路」がまた、厄介な存在です。あくまで建築基準法上の「道路」なので、私たちが普通にイメージする「道路」とは必ずしも一致しません。

 

先ほど説明した通り、建築基準法上の「道路」はまず、原則として幅員が4メートル以上です(図表4)。車1台が通行可能な程度の幅を最低限確保しています。ところが現実には、それより狭い道路はいくらでもあります。これらの道路は建築基準法上の「道路」には当たらないのでしょうか。

 

[図表4]建築基準法上の道路とは

 

実はこれらの中にも、建築基準法上の「道路」として認められるものがあります。それは、通称「二項道路」と呼ばれるものです。建築基準法が施行された1950年の時点ですでに建物が建ち並んでいる幅員4メートル未満の道路のうち、その地域内の建築行政を担当する特定行政庁が指定したものです。この「二項道路」では、道路中心線から2メートルの線を道路境界線とみなす取り決めになっています。

 

「二項道路」に面した土地に建物を建てる場合には、道路境界線とみなされる位置まで建物を後退させなければなりません。建築基準法上の「道路」にあたる部分には、建物や門扉などを建てることが禁じられており、その土地は建物を後退させなければいけない分だけ狭くなってしまうことになります。

本連載は、2017年8月25日刊行の書籍『絶対おトク!賃貸併用で実現する0円マイホーム』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

絶対おトク!賃貸併用で実現する0円マイホーム

絶対おトク!賃貸併用で実現する0円マイホーム

金子 征司

幻冬舎メディアコンサルティング

賃貸併用住宅は、マイホームの一部を賃貸用の部屋にして、家主が自宅として住みながらも家賃収入を得られる「働くマイホーム」です。しっかりと賃貸管理を行って家賃を確保できれば、住宅ローンの返済を毎月ゼロ円に抑えること…

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