前回は、賃貸併用住宅用の土地購入において、事前確認が必要な権利関係を解説しました。今回は、「旗ざお地」に共同住宅を建設する際の注意点を見ていきます。

制約はあるものの、割安感のある「旗ざお状の敷地」

土地選びの大きなポイントは、割安感です。立地や規模などの条件に割に土地価格が安いということは、自己居住用としてありがたいのはもちろんのこと、賃貸用としても収益性の向上に役立ちます。

 

とはいえ、そういう割安感のある土地に巡り合うのは、そう簡単ではありません。誰もが割安な土地を手に入れたいと考えているからです。

 

ただし、狙い目はあります。変形地など、一見、条件が悪そうな土地です。長方形の土地であれば、建物を建設するにしても制約が少なく誰にでも好まれるでしょう。

 

しかしそれだけに、価格は割安というわけにはいきません。それに対して、変形地など条件の悪そうな土地はその利用に一定の制約を受けることがあるだけに、長方形の土地のように万人に好まれるというわけにはいきません。だからこそ割安感が生まれる可能性があるのです。

 

変形地などとして、具体的にどのような例が考えられるのでしょうか。

 

一つは、「旗ざお状の敷地」です(図表1)。道路から少し入った奥まったところに広がる敷地です。奥まったところに広がる土地を旗に、そこと道路を結ぶ路地状の土地を旗ざおに見立てて、こう呼ばれます。「敷地延長」「路地状敷地」とも言われます。

 

[図表1]旗ざお状の敷地例

 

「建築基準法」「自治体の条例」の順守が必要

建築基準法の接道義務に加え、そうした敷地では共同住宅の建設が自治体の条例によって制限される場合があります。

 

敷地の四周が隣接地で取り囲まれているため、火災が起きたときの入居者や周辺住民の避難安全に問題があるという見方からです。それとは別に、各自治体の安全条例によってエリアごとに独自の規制があるので注意が必要です。

 

例えば東京都の場合、建築安全条例と呼ぶ条例で安全性や防火性などの観点から独自のルールを定めています。そこでは、路地状敷地での特殊建築物の建設を原則として禁じていますが、次の条件を満たす共同住宅は例外的に建設を認めています(図表2)。

 

[図表2]東京都において 路地状敷地で建設が認められる共同住宅

出所:東京都消防設備協同組合
出所:東京都消防設備協同組合

 

●地上3階以下
●延べ面積200平方メートル以下かつ住戸数12を超えない
●路地状部分の長さ20メートル以下

 

実はこの条例では以前、寄宿舎や下宿を含む「共同住宅等」の建設が一律に禁じられていました。ところが、国が既存ストックの活用として注目されるシェアハウスを法令上は「寄宿舎」として取り扱うことを明らかにしたことを背景に、そのような多様な住まいに対応できるようにするとともに、既存ストックの活用を促す観点から、2015年4月に一律禁止という取り扱いを改めた経緯があります。つまり東京都では小ぶりな賃貸併用住宅規模の共同住宅が、これによって建設可能になったのです。

 

しかし、特殊建築物一般は相変わらず制限されていますから、路地状敷地への需要は限られ、価格には一定の歯止めが掛かります。割安感を持って購入できる可能性があるのは、こうした事情からです。

 

土地を選ぶ際には、建築基準法および各自治体の条例の両方を守る必要があるので注意してください。

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金子 征司

幻冬舎メディアコンサルティング

賃貸併用住宅は、マイホームの一部を賃貸用の部屋にして、家主が自宅として住みながらも家賃収入を得られる「働くマイホーム」です。しっかりと賃貸管理を行って家賃を確保できれば、住宅ローンの返済を毎月ゼロ円に抑えること…

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