士業との付き合いでは「手数料」にも十分注意
〈相続対策のアパート建築は慎重に〉
不動産の価格が長期的に下がると予測されるときに、相続対策の節税部分だけをとらえるのは好ましい対策とはいえません。
駐車場経営ができそうな条件の良い土地を買うために借金するのは、設備投資がほとんど必要ないので効果的なのですが、借金してアパート経営するという対策は、建物の減価に借金の返済が追いついていかず、相続対策としては長期的に見るとあまり効果がありません。
このようなことを相続対策と銘打って、不動産会社が主催するセミナーで講演する税理士がいますが、税務上相続時点での節税効果になるという視点では正しいものの、将来の相続対策になっているか、本当に将来の有効利用になっているかという視点では、慎重な判断が必要なのではないかと思います。
〈不動産関連での弁護士の利用の仕方〉
弁護士に関していうと、手数料が比較的高いことが難点です。また、不動産関連事項で訴訟になった場合には、不動産に詳しい弁護士を紹介してもらい、将来かかるであろう費用の概算を確認して依頼することをおすすめします。
訴訟外で不動産関連の交渉による事案の解決を依頼する場合には、その弁護士が不動産実務に比較的詳しいかを確認し、着手金を支払う場合には、成約しない場合がありますので後でもめないように納得して支払うことが大事です。
特に不動産関連の資産が金額的に大きい相続手続きの依頼事案は、報酬基準が他と比べて高いので、税理士、司法書士、不動産鑑定士等の報酬料率と比較検討して依頼することをおすすめします。相続人の遺言書の作成については、公証人役場で相談に乗ってもらって手続きを行うことも、費用が安く済むので有効です。
〈不動産鑑定士、司法書士、土地家屋調査士の実態〉
不動産鑑定士も鑑定ばかりやっている鑑定士ではなく、幅広く不動産実務の経験を積んでいる鑑定士のほうが有効なアドバイスをしてくれるものです。都道府県にそれぞれに地方の不動産鑑定士協会がありますので、そこで実務経験のあるコンサルタント系の不動産鑑定士を紹介してもらいましょう。
また、不動産鑑定士協会の中にカウンセラー部会というものがあるのですが、不動産鑑定士の他に不動産カウンセラーの資格を持っている人は、実務経験の極めて豊富な人だと判断できます。また、国交省所管の不動産コンサルタント技能資格を持った宅建主任者は、よく実務経験を積んでいる人が多く、相談する不動産コンサルタントとしてすすめたいと思います。
その他、司法書士や土地家屋調査士も不動産の有効活用では重要な役割を担います。このうち司法書士は、4年ほど前に100年ぶりに司法書士法の改正があり、その役割が大きく変わりました。従来は、文字どおり司法の書士的な仕事だったのが、不動産登記情報を一手に引き受けるようになったのです。
かつて不動産を所有すると権利書が発行され、どんな家庭でも権利書を厳重に保管していたはずです。それがなくなり不動産登記情報になったわけです。
この変更に際して司法書士は手数料を見直しました。不動産売買に関して、本人確認ができる唯一の存在として力を発揮できるので、報酬額も高くなっています。ところが、不動産登記については、自分で勉強して登記できないわけではありません。もちろん業として行うと司法書士法違反になりますが、自分のために行うことは何の問題もありません。
土地家屋調査士については、三角測量方式と呼ばれる測量方式で不整形な土地の測量に力を発揮していましたが、いまは機械がやってくれます。ですから、広大な敷地を除けば、土地の測量も少し勉強すれば自分でできるものです。
ただし、隣接地との境界に関するトラブルが生じたときは、経験豊富な土地家屋調査士でないと解決できないケースがあるので注意が必要です。土地家屋調査士に依頼する場合は、司法書士とは少し異なり、地元で評判のよい経験豊かな人に頼むのが一番です。
確定申告は「税務署に任せる」ような感覚で・・・
「税務署との付き合い」というと、業者や士業とは質が異なる面が多々ありますが、私は何でも気軽に相談すべきと考えています。
たとえば、毎年の所得税の確定申告です。資産家の多くは税理士任せにしていますが、むしろ、税務署に任せてしまうような感覚でよいでしょう。アパートを経営していると、家賃滞納者への対応で、弁護士費用の他、交通費などの様々なお金がかかります。それらもすべて経費に入れるといった「経費の感覚」を持つことも大切です。
税務処理の面では、アパート経営者などで家賃の滞納額を未収計上してしまっている人もいます。その場合は、むしろ未収で計上せずに、実収益があったときに計上して申告・納税したほうが混乱しなくて済むでしょう。「未収」といっても、結局は収益として計上できないこともあるからです。
要は、アパート経営を行っている場合には法人と同じように考えることです。私は不動産の視察で妻や知人と海外に行った場合にも、相手先の名前、目的、利用交通機関、宿泊先などの証拠書類を揃えておいて経費にしています。
相続税に関しても、不動産鑑定士の鑑定書つきの申告は税務署が嫌がるものですが、むしろ減価要因が多いならば積極的に活用すべきでしょう。嫌がるのは、税務署が認めない場合は税務署が鑑定士をつけて鑑定する必要があり、手間がかかるからですが、そこに交渉の余地も生まれます。何より正当な対応で損をしないことが大切なのです。