前回は、賃貸管理を任せる不動産業者を選ぶ際のポイントを解説しました。今回は、リフォーム業者の選び方について、6つのポイントを参考に見ていきましょう。

資産の価値に雲泥の差が出るリフォーム業者の選択

資産家としては、リフォーム業者との付き合いも外すことはできません。アパートやマンションを賃貸に出したり、貸家の売却時などに際してリフォームしてから貸し出したり売却することが避けられないからです。

 

たとえば、売却するときに現状で汚れたまま売却するのと、ある程度リフォームしてから売却するのと、どちらが売れると思いますか?もちろん、リフォーム後のほうが売却しやすいものです。よほど大規模な改装でもない限り、その費用はマンション1室につき数十万円、多く見積もっても500万円くらいです。そのリフォームを行って、その不動産を近隣の相場に近づけて売却することが古いマンションを正しく売る方法のひとつといえます。

 

ところで、最近はリフォーム業者と施主とのトラブルも増えてきました。老朽化し始めた自宅マンションをリフォームして価値を高めたり、経営していた賃貸アパートを修繕したり、不動産の有効活用において、リフォーム業者との付き合いは重要ですが、リフォーム業者の増加が影響したためか、安易な業者、顧客の納得いくリフォームを行うことができない業者も増えているようです。そのような業者に頼んでしまうと、その不動産の所有者は大きな損を被ってしまうことになりかねません。

 

リフォーム業には専業大手もないわけではありませんが、実態としては職人が営んでいる個人店、工務店や塗装店などの工事店、また、リフォームを営業として受けて外注するリフォーム営業会社などに分かれます。事業規模は多くが中小であるため、どんな業者と付き合うかが重要になってくるのです。その点で留意したいのが、次の項目です。

 

①マナーがよく、気配りが行き届いて、対応が丁寧であること

いろいろな業者がいますので、なかには愛想の悪い業者、仕事が丁寧ではない業者もいないわけではありません。特にリフォーム営業会社の場合、実際に施工するのは外注先であるため、愛想の良し悪し、仕事が丁寧かどうかなど、実際のところはわかりにくい面もあります。

 

②何よりも誠実であること

料金面はもちろんのこと、施工内容についても、できないこと、もしくは顧客が要望していてもやらないほうがよいことは、はっきりと「できない、やらないほうがよい」と伝えてくれる業者を選ぶことです。

 

③プロとしての提案力があること

業者が顧客側の視点に立ってばかりだと、「要望のとおりやればよい」とだけ考えがちです。その点、「顧客の要望を満たすには別の方法がよい」ということがあれば、それを提案してくれる業者のほうが親切です。

 

④リフォームの経験が長く、実績があること

業界経験の浅い業者の場合、一生懸命にやってくれても〝しっくりくる〞ものにならないケースもあります。その点、業界経験の長さは一日の長につながり、手際の良さや物件全体との調和を持たせる施工など、安心感があるのです。

 

⑤透明度の高い、正しい明細を出してくれる

リフォーム業者の腕は見分けにくくても、明細を見せてもらえば「どのような商品・材料を使っているか」また「材料をごまかしていないか」がわかります。明細を示しながらリフォーム工事の内容を説明してくれることが大切なのですが、それをきちんと行ってくれない業者が多いのも事実です。

 

⑥アフターサービス、手直しの対応が速い

リフォームでは、工事が終わった直後のチェックはしっかり行ったとしても、また、その数カ月後や数年後に不具合が出ることもあり得ます。そのとき迅速に対応してもらえるかどうかも大きなポイントです。無償か有償かは個々に決める必要はありますが、技術力があり誠実な業者ほど利益につながりにくい工事でも喜んで対応してくれるものです。

確かな技術力があるのは「大工」を抱える中堅会社

これらのうち、何が適正であるかがわからない場合は、2〜3社から見積りを取ることです。リフォーム工事会社でも実態としては下請けに出してるところがほとんどですから、確かな技術力があるのは、中堅のリフォーム工事会社で大工をきちんと抱えているところとなります。また、リフォーム業者として何より重要なのは経験です。リフォーム業者は、できては潰れ、できては潰れの連続でいまの業界が形成されていますから、経験が長いということがすべてにおいて優先されるのです。

 

また、透明度の高い見積り明細というのは、張り替える壁紙の広さを測り、正確に計算して明細書を出す業者です。絶対に「一式」などと見積りに書いて金額を出している業者に頼むべきではありません。誠実な業者は、クロス張り替えだと、「どこのメーカーの何番といったクロスナンバー、1平方メートル当たりの単価」などを記して見積り明細を提示します。

 

依頼する際には、留意事項のうちいくつかの項目を確認できればかまいません。しっかりとチェックし、規模が小さすぎない業者を選び、経歴書を見せてもらえばよいのです。リフォーム業者には登記をしていない会社も多いので、会社の経歴書を見せてもらえば安心して経験を判断できます。

 

なお、リフォームのセンスがないと、売却するときに売却額に大きな差が出てきます。「センスがない」とは、きらびやかな値段の高いだけの手すりや、違和感のある吊り棚などを顧客の要望も確認せずに設置してしまうような業者です。そのようなことがあると、リフォーム費用が高くつくうえに、結局は売却できなくなってしまいます。リフォーム業者の選び方に失敗すると、後々、よけいなお金がかかるうえに、売りたいはずの物件が売れなくなってしまうこともあるのです。

 

このようなことも、結局は総合的な相続の対策にもなってきます。ですから、その対策を資産家が元気なうちにきちんと見直しておくことが大切なのです。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『塩漬けになった不動産を優良資産に変える方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

塩漬けになった不動産を 優良資産に変える方法

塩漬けになった不動産を 優良資産に変える方法

相馬 耕三

幻冬舎メディアコンサルティング

バブル崩壊以降、買ったはいいものの収益を生んでいない賃貸物件や、地価の暴落でほったらかしになっている土地を抱える不動産オーナーは多くいます。ソニー生命の不動産整備などを実現してきた経験豊富な不動産コンサルタント…

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