日本のREITは米国のものに比べると透明度が低い!?
REITとはReal Estate Investment Trustの略で、不動産投資信託と訳されます。端的にいうと、投資家が財産を信託し、それを不動産に投資する金融商品です。日本でも2001年から導入され、一般の不動産投資よりも小口でリスクが少ないといった理由から徐々に浸透しています。ところが、米国のREITと日本のREITでは私見ではやや異なるところがあると思います。
日本のREITは、米国のものに比べまだ透明度が薄いのではないかと思います。米国のREITは徹底した投資家保護の観点からSEC当局(米国証券取引委員会)の規制が厳しいのに対し、日本のREITはそもそも日本の不良債権処理を促進させるため、バブル崩壊後に政策的に組成された経緯があるため、当局の監視に投資家保護の視点が薄く、組成の際の利益相反部分が少し甘いことが感じられます。
また、投資家が日本の投資家が中心ということも難点です。世界の投資家があまり入っていないのです。
米国のREITは全世界中から投資家が入っているため市場が深いのに対し、日本の場合は、ちょっと市場が悪くなると、皆売りに出るといったことが可能性としてあります。すなわち、リマーケティング市場が広く確立していないということです。
さらに、日本のREITに入っている不動産の収益の中身が旧借地法に基づくものが多く未成熟なものが多く見受けられます。
米国のREITは10年契約や15年契約が中身の賃貸借契約のベースになっており、賃借人は原則的に途中で解約できません。一方の日本は契約期間中でも通常6カ月前の通知で解約される可能性があるので、非常に不安定でリスクが高いということになります。ですから、私はまだREITについて、1〜3年程度の投資として見て、実際の不動産投資としてはあまり考えないほうがいいだろうと思っています。
「営業担当者のアドバイス」を鵜呑みにしない
そのようなREITですが、米国では、いま、前述のように特に中古住宅市場が活況を呈していることに反して、REIT市場は低迷しています。なぜなら、REITが長期金利の影響を受けやすい金融商品だからです。いわば、インフレとその過程での金利の上昇に弱い、純然たる金融商品として考えられているのです。
2013年の5月末に米国長期金利は2%台に乗せ、その直後にREIT相場は下落に転じました。金利高は資金調達コストの増加につながり、REITの収益を圧迫します。一方で、REITは課税所得の9割以上を配当として投資家に支払う仕組みですが、そもそもの物件購入資金を借り入れに頼ることが多いため、金利動向の影響を受けやすいのです。
超低金利、配当の高さと不動産の基準価格の上昇を期待して大量の投資マネーが流れ込んできたREIT市場ですが、長期金利が上昇に転じると一挙に冷え込んでしまうわけです。なお、日本の投資家に対しても、この動向は影響を及ぼします。なぜなら、日本で設定された米国のREITを通じて、日本の投資家の個人マネーも米国市場に流れ込んでいるからです。
このように、極めて金利の影響を受けやすいREITに対して、日本の証券マンは「安心・安定、インフレに強い」と謳っています。日本のREIT市場が成熟すればするほど、それは「不動産」ではなく「金融商品」の様相を強くします。その流れを理解しないまま、日本の投資家が「この会社なら信頼できるだろう」と証券マンのアドバイスを真に受けると、大やけどをしてしまうことになるのです。
特に、いまは日米の二国間のお金の流れだけで説明がつく時代ではありません。中国、シンガポールなど新興国の投資マネーが投資物件を物色している時代です。この海外マネー流入の動きは、米国の商業不動産で顕著です。
つまり、不動産の相場というものも、こういった地域では物件一棟ごとにまったく異なり、むしろ相場という基準がないとさえいえます。実際に、空室率や賃料の回復以上に取得価額が上がっていくと、投資の採算が合わなくなってきます。
REITの冷え込みの一方で隣の商業ビルの価格が高騰しているとなると、普通の人であれば、「いったい何を信じればよいのか、何を基準に考えればよいのか」と判断に迷い、混乱する状況のはずです。だからこそ、一人のアドバイスを鵜呑みにしてはいけないのです。