前回は、病院の建設に最適な「設計会社」を選定する方法を説明しました。今回は、病院建設における「設計会社の業務領域」について見ていきます。

病床数や診療科目などの決定を行う「事業構想」段階

前回までは設計会社および施工会社の決め方について述べましたが、最後に病院建築における設計会社の業務領域についてご説明します。

 

[図表]病院建築事業の組織構成

 

病院建築の事業計画は、「事業構想」「設計」「工事・準備」「開院」と、4段階を踏んで進んでいきますが、「はじめに」でおもな業務を述べた通り、設計会社の業務は「事業構想」のあとの「設計」段階から始まります。ただし、久米設計では、「事業構想」段階から参画する事例もあります。

 

連載第2回でも述べましたが、最初の「事業構想」段階で、地域の人口構成や疾病務領域です。それに基づいて病床数や診療科目などが決定され、設計の与条件として整理されて初めて「設計」段階に入るのです。

 

病院設計タスクチームのある設計会社は病院の細部までよく知っており、コスト面や運営面まで踏み込んだ提案をするため、建築を依頼する側にとっては医療コンサルタント会社との境界線が見えづらいかもしれませんが、医療コンサルタント会社は経営面のコンサルティングを担当し、設計会社は建物(ハードウエア)のコンサルティングを行います。

 

したがって、設計会社をどのように選定しても、図の通り、病院建築の事業組織は一般的に、主体者である病院、医療コンサルタント会社、設計会社、施工業者の4者で構成されます。

 

もちろん、先に述べたようなマーケット調査・分析を医療コンサルタント会社に委託せず、自院で行う病院も少なからずあります。また、設計をゼネコンに委託するなら、設計会社と施工業者は同一の会社ということになります。

 

しかし、いずれにしても、それぞれがそれぞれの業務を完全に遂行し、互いが協同する組織こそが病院建築を成功に導くにちがいありません。

特殊で複雑な「病院」という施設だが…

大変特殊で、きわめて複雑な病院という施設。設計担当者が失敗することも実はよくあります。しかし、彼らはプロフェッショナル。失敗しても、そこから何かを学び設計力を高めているのです。

 

◇稼働中の病院で、一部改築工事を行っている最中のこと。電気設備作業上のコンピュータ制御の誤りで、一瞬電源が落ちてしまった。休日であったため、大事には至らなかったが、病院施設管理側との連絡・確認不足が原因であった。作業担当者の知識を深めるとともに、常に施設や運営側との密接な連携が必要だ。

 

◇春を迎えて気温が高まったのに、北側病棟の患者さんから暖房の注文。秋になって冷え込んできたのに、南側病棟の患者さんから冷房の注文。春・秋の中間期のとくに昼間、南向きと北向きの病室環境は、患者さんにとってまったく異なる。南と北は系統を分け、異なる空調ができるようにすべし。

 

◇憩いの環境を、と要望されて設けた「せせらぎ」が、開院後、運用費が高くつくという理由で流れていない。ランニングコストは十分すぎるほど説明したうえで提案しなければ。

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    本連載は、2017年8月30日刊行の書籍『病院再生の設計力[増補改訂版]』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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