今回は、管理会社へ賃貸管理を委託する際に検討すべきコストについて見ていきます。※本連載では、フィルコ株式会社 代表取締役・芝辻保宏氏の著書、『賃貸マンション 管理会社VS自主管理』(株式会社澪標)の中から一部を抜粋し、不動産賃貸経営における、「管理会社への委託」と「自主管理」、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

一人当たりの業務負担が重い大手企業

前回の続きです。

 

(4)人件費

 

総合不動産業の会社の中で最も人員が多いのは営業職です。その営業職の中でも花形の部署というと不動産開発や不動産売買です。

 

特に個人の不動産売買仲介を主としている大手不動産会社は売買仲介部門での売り上げが収益の柱となっており、主要な駅に営業所を出店し、その営業所に営業マンを多く配置し、人件費、広告費用も大きく使われています。

 

費用を大きく使うということは、収入も大きく見込めるわけです。売買仲介における手数料(仲介手数料)は、物件価格(売買価格)の約3%+6万円ですから、5,000万円の物件であれば約156万円。これが売主・買主両方から得られる場合は、1回の取引で約312万円の仲介手数料収入となります。1件の契約で営業マン一人がこれだけの手数料を売り上げるわけで、月に2〜3件でも契約すれば年間にすると数千万円の売り上げになります。

 

給与体系もこの売り上げた手数料に対して歩合部分が多く手数料を稼げる営業マンは給与も当然高くなるので、バリバリ働きバリバリ稼ぐというところからも花形の部署ということになるのでしょう。

 

花形の不動産売買仲介部門に比べて、不動産賃貸管理の部門は地味です。特に私が入社した頃の不動産賃貸管理の部署は会社の中でも立場は低く仲介部門で使えなかった営業マンが異動させられる場所と言っても過言ではない部署でした。

 

また、給与体系は固定給が多いので、若い頃は仲介部門にいた者も歳をとるにつれ手数料収入を追いかけることが精神的に辛くなってきたりしますので、定年前になると賃貸管理の部門に異動するというケースも多くあります。

 

勤続年数が長いベテラン営業マンですから、固定給にするとそれなりの金額の給与を支払うことになります。そうなりますと部署単体の人件費が高まっていきますので、不動産賃貸管理部門の人件費率は高くなっていました。

 

人件費率が高くなるということはその分仕事をしてもらわないといけないわけで、一人当たりの業務量が必然的に増えます。するとどこかで無理が出てくることになります。

 

うまく人件費を抑えている会社なら良いですが、大手企業のように従業員を抱えている会社であればこの辺りは心配です。

工事・修繕コストの差を生み出す「中間マージン」

(5)工事・修繕コスト 〜中間マージン〜

 

何か修繕や工事が発生した場合、例えば建物の給水ポンプが故障し、ポンプを取り替えないといけないケースがあります。ここで大きなコスト差が出てきます。

 

管理会社から修理業者へ直接発注するケースは良いのですが、中には中間に複数の業者が入る場合があります。

 

不動産管理会社が建物設備の管理をビルメンテナンス会社に第三者委託(二次発注)し、さらにビルメンテナンス会社から修理業者へ発注(三次発注)した場合、各社のコスト費用を計上する必要がありますので、工事代金は自ずと高くなってしまいます。

 

これが大きな企業であればあるほど、人件費など様々な費用が計上されて行きますので、よりコストが高くなります。

 

大手の企業になると信頼おける会社(=それなりの規模の会社)としか取引をしませんので、きっちりと提携をした業者への発注しかできません。

 

信頼できるのは良いことなのですが、その分コストに跳ね返ってきてしまいます。

 

管理会社もまた大企業になりますと売上を積み重ねなけらばなりません。それは担当者の人件費だけでなく、事務担当者、上席者、本社の経費も賄わなければなりませんので、やはり費用が高くなるのは致し方ないのです。

 

本連載は、2017年6月10日刊行の書籍『賃貸マンション 管理会社VS自主管理』(株式会社澪標)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

賃貸マンション 管理会社VS自主管理 ~大空室時代を生き抜く賃貸経営術~

賃貸マンション 管理会社VS自主管理 ~大空室時代を生き抜く賃貸経営術~

芝辻 保宏

株式会社澪標

人口の減少、住宅の供給過多の中、不動産賃貸経営はより一層厳しい環境にさらされています。 これからの賃貸経営の勝ち組になるにはどうすればいいのか。不動産業界に20年以上携わってきた筆者が不動産賃貸経営における悩みを…

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