現状回復費用は「賃貸人負担」となるケースが増加
前回の続きです。
(6)原状回復費用、他事業主の負担
その他にも事業主の負担として、賃借人(転借人)入れ替え時の原状回復費用(内装工事費用)などがあります。
これも昔から明確なルールのなかった原状回復費用の負担区分が、国土交通省のガイドラインや判例により、賃貸人負担になるケースが増えてきたためで、賃貸人である事業主に求められることになってきました。
契約によっては、原状回復協力金など、月々一定の金額を徴収することであくまでも毎月固定収入を謳っているところなどもありますが、実質は原状回復費用を負担させられているということです。
原状回復費用以外にも様々な名目で費用を取られているケースも珍しくはありません。
好条件な一括借上契約は「建設費用」に要注意
このようにひとくちに一括借上契約といっても、契約の内容によって、事業主様の収益は大きく変わります。
もちろん本当に手間なく全てを一括借上業者にて管理をしてくれるのであれば、その対価としての金額はいいと思います。
しかし、免責期間中の賃料や礼金などの費用は決して少ない金額ではありません。これらをよく吟味してお考えいただく必要があるのです。
「うちの一括借上契約はそんな不利な特約はついてないよ」
という方もいるかも知れません。
そのような場合は次のいずれかでしょう。
一つ目は一括借上業者が仕事を取ろうとするために、企業努力していること。
昔からお付き合いのあるような信頼おける業者ならこのようなこともあるかもしれません。他の仕事である程度利益を出されているのであれば、こっちで損してあっちで儲けてということも。しかし、業者はあくまでも民間の営利企業。損をしてまで厳しい条件では契約されないのではないでしょうか。
二つ目は建設会社と借上業者がイコールまたはグループ会社など密接な関係にある場合。
これは端的に言うと「建設費用」で稼がれているということです。
建設会社は建物を建設することで収益を上げるのが仕事。建設して後の収支は知りませんじゃ話になりません。そこで自社またはグループ会社にて一括借上契約を好条件で提示することで、建設の仕事を受注するというわけです。
一括借上契約では利益は上がらなくても、建設費用にて利益が上がればいいということです。つまり、建設費用に一括借上契約の利益も含まれると言っても過言ではないのです。
この場合は建設費用も精査しなくてはいけません。しかし、建設費用の内容まで精査できる方はなかなかいらっしゃらないでしょう。
結果的に一括借上契約をしてもらって、安定した利益があるのなら、建築費用はおっしゃるとおりで、となるケースは多いのでしょう。このようなことから、安易に一括借上契約を締結することはご自身の利益を削っていくことにつながります。
一括借上契約をお考えの方、建設会社や管理会社に提案されるまま契約をするのではなく、内容を精査してしかるべき専門家にご相談されることをお勧めいたします。