免責期間中だと入居者がいても賃料が入らない!?
前回の続きです。
(3)契約開始時の免責期間と(4)空室発生時の免責期間
新たに賃借人(転借人)を募集している一定期間は賃料支払いの免責期間を設ける。
新築物件の場合、昔は完成前(建築中)の段階で入居者が全て決まることも多々ありました。入居者は少ない新築物件の中でより良い条件の部屋を他の入居者に取られないように、部屋の内装どころか外観もできていない時点で申し込みをするのです。未完成時点でも契約は可能で、重要事項説明の際には建築工事完了時の形状・構造等を説明する必要があります。
しかし、あくまでも机上の説明ですので、完成後思惑と違うことはよくあることでした。
昨今の新築物件の場合は、競合物件が増えていることもありますが、未完成ゆえのトラブルを避けるために、完成後または完成間近での入居者募集を行うところが増えました。モデルルームにしろ、現実のお部屋にしろ入居者に内装等を確認いただくことで、トラブルやキャンセルのないようにしている傾向にあります。
そうすると必然と募集開始が遅れますので、戸数の多い物件ですと満室にするまである程度の期間を要することがあります。
このリスクをカバーするのが免責期間です。
つまり建築工事完了後、2ヶ月〜3ヶ月は満室にならない可能性があるので、その間の賃料は免除してください。1月から入居開始できる物件ですが、賃料の支払いは4月からにしてください。ということです。
借入をされて建築される方は、金融機関に対しての返済も後ろにずらすことで借入金が返済できないということは避けられます。
この契約の大きなところは、入居者(転借人)が決まっても決まらなくても免除しなくてはならないところです。
極端な話、完成後すぐに満室になった場合でも事業主様には賃料が入ってこないということです。
同じ物件を例に出すと
1室10万円×50戸=500万円×3ヶ月=1,500万円
90%の借上料率だったとしても、1,500万円×90%=1,350万円の収入がないということになります。
また、この特約は中古の既存物件でも盛り込まれることがあります。空室が多く悩ましい物件、10戸の空室があったとすると
1室10万円×10戸=100万円×3ヶ月=300万円
元々空室だったからしょうがないと諦められるのでしょうか。
さらにこの免責特約は契約期間中に及ぶこともあります。
1戸解約が出た際に、1ヶ月の免責ということも存在するところです。空室のたびに免責をされるのであれば何のための一括借上なのかわかりません。
30年一括借上契約でも、数年毎に賃料の見直しが・・・
(5)賃料の見直し
20年、30年一括借上契約します! というからには、期間中ずっと同じ賃料で借りてくれるんだと思ったら大間違いです。
バブル期あたりに計画・建築された物件は、賃貸借契約の更新の都度(2年)賃料を値上げできるものとして、収支計画も組まれていました。
この頃は賃貸借契約に賃料は毎年または更新毎に値上がりするような特約も存在していました。
今となっては考えられないことですが、賃金が上昇し、地価が上昇、賃料も上昇するものと考えられていました。
時が経てば、建物が老朽化していく、室内の設備も劣化していく、競合物件が増加して需要と供給のバランスが崩れるなど考えてもいなかったのでしょう。
そんな時代ですがやはり一括借上契約も存在していました。しかし、このような考え方ですから、「賃料を見直しする」特約を付けていない業者もいました。
見直しをして値上げをされたくないからです。
しかし、地価、賃料の下落が始まり、一括借上をしている業者も賃貸経営が厳しくなります。賃料見直しの特約がないことが仇となり、賃料の値下げ交渉が難航し、訴訟に発展した件数も多く、一時は社会問題になりました。
このように業界では苦い思いをしていることもあり、現在は賃料見直し特約を付けているところがほとんどです。
たとえ契約期間が20年でも30年でも、賃料の見直しはします。このご時世2年後、3年後もわからないものです。よって2年毎の賃料の見直しというところが多いですね。