今回は、賃貸物件の一括借上契約における「敷金・礼金」の扱いについて見ていきます。※本連載では、フィルコ株式会社 代表取締役・芝辻保宏氏の著書、『賃貸マンション 管理会社VS自主管理』(株式会社澪標)の中から一部を抜粋し、不動産賃貸経営における、「管理会社への委託」と「自主管理」、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

敷金は「預かり金」、礼金は純粋な「賃貸人の収入」

前回の続きです。

 

(2)転貸借契約の条件

 

端的に言うと一括借上契約をする不動産会社は、安く借りた部屋を高く貸すことで差益を得るわけです。

 

「安く借りる」というのは、先述の「査定賃料」と「借上料率」によります。

 

月次の収入だけ見ると、月額賃料によるわけですが、賃貸借契約では月額賃料以外にも賃貸人の収入源があります。

 

例えば、契約締結時に支払われる敷金・礼金。敷金はあくまでも預かり金ですが、礼金は純粋な賃貸人の収入となります。築年数が古い物件や競合が多い地域、ワンルームマンションなどは礼金を低く設定するところもありますが、特に新築時などでは礼金はまとまった収入となります。

 

例えば 2LDK 専有面積50㎡ 月額賃料10万円の新築マンションの場合、首都圏ですと敷金20万円(賃料の2ヶ月分)、礼金20万円(賃料の2ヶ月分)程度です。

関西圏の「敷金・礼金」は、首都圏よりも高い傾向

敷金・礼金は地域差もあり、関西圏では首都圏よりも高くなる傾向にあります。同じ条件ですと関西圏なら敷金20万円(賃料の2ヶ月分)、礼金30万円(賃料の3ヶ月分)もあり得る数字です。

 

余談ですが、関西圏(京都を除く)は商慣習の違いで昔から「保証金」「解約引き」という名目で契約締結時の費用として存在しています。

 

保証金≒敷金、解約引き≒礼金ですが、首都圏の敷金・礼金の相場は3ヶ月分ほどが上限でしたが、関西圏の保証金は8〜10ヶ月分程度、解約引きは4〜6ヶ月程度の時期もありました。

 

あまりにも高額なので訴訟が増えたり、景気の停滞もあり、近年では首都圏と同様に、敷金・礼金という名目に変えていく傾向にあり、金額も減っていきました。

 

それでも新築物件はやはり既存物件と比べて競争力が高いので、敷金・礼金はしっかりと設定されます。

 

そして一括借上契約の場合、この費用は一括借上業者が得ることになります。

 

例えば

 

敷金20万円(2ヶ月分)×50戸=1,000万円

礼金20万円(2ヶ月分)×50戸=1,000万円

 

敷金は解約時返還するものとはいえ、一時的に2,000万円の現金が業者に入ることになります。

 

これだけの金額になると、借入金の返済に充当したり、運転資金に充当することができますね。

本連載は、2017年6月10日刊行の書籍『賃貸マンション 管理会社VS自主管理』(株式会社澪標)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

賃貸マンション 管理会社VS自主管理 ~大空室時代を生き抜く賃貸経営術~

賃貸マンション 管理会社VS自主管理 ~大空室時代を生き抜く賃貸経営術~

芝辻 保宏

株式会社澪標

人口の減少、住宅の供給過多の中、不動産賃貸経営はより一層厳しい環境にさらされています。 これからの賃貸経営の勝ち組になるにはどうすればいいのか。不動産業界に20年以上携わってきた筆者が不動産賃貸経営における悩みを…

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