本連載では、「相場の福の神」として知られる藤本誠之氏の最新刊で、11月19日刊行の『投資のプロが実践! 株で儲ける日経新聞の読み方』(リベラル社)から一部を抜粋し、ネットや各種媒体からの「勝てる株式情報」の見つけ方を伝授します。第11回目のテーマは「業界地図の読み方」です。

就活に役立つだけではない「業界地図」

合併や買収によって、業界内での力関係が大きく変わろうとしているとき、株価にも大きな変化が現れます。こうした業界内の動きを知るには、「業界地図」を読み解くと、理解が深まります。

 

 

秋になると、出版社各社から次々に、業界地図が出版されます。皆さんご存知でしょうが、これはさまざまな業界について、業界内各社の規模の比較や企業間の業務提携などの関係性をわかりやすくまとめたもの。業界の再編なども、一目瞭然です。投資家の皆さんの中にも愛用者は多いのではないでしょうか?

 

私も、長年、さまざまな業界地図を愛用してきました。業界地図を眺めてはいろいろな発見もしたものです。かつては「ゼロイチ(01)銘柄」と呼ばれる、銘柄コード末尾が01の銘柄が業界の最大手であることが多かったので、その業界全体に影響する材料があった場合、まっさきに動くといわれてきました。業界の大手から、中小企業に向かって少しずつ遅れて株価は動いていきますから、業界地図を活用して、中小企業がどの銘柄なのかがわかれば、先回りして動くことも可能なのですね。

 

しかし、最近では力関係が大きく変わった業界も多く、特にIT・通信分野やエネルギー分野は、新興企業があっという間に一大銘柄に成長します。定期的にチェックするように心がければ、自分の認識も常に更新されていきます。すると、次に動く銘柄もたやすく予想できるというわけです。使わない手はありませんね。

地図を眺めてあれこれ想像するのも楽しい!?

さらに、この業界地図は、便利なだけでなくとても楽しい面もあるのです。
私が考える楽しさとは、

 

こことここがひっつくと、業界1位になりそうやな

 

あの会社がこの会社に買われたら、株価が跳ね上がるんとちゃうか?

 

などと、合併によって塗り変わる業界の勢力図をイメージできるところにあります。

 

というのも、いつ起こるかわからない不祥事や、まだ開発予定すら存在しない将来のヒット商品を予測するのは不可能ですが、合併や買収は実在する会社があってこその出来事。しかも、業界内で起こる確率が高いだけに、業界地図を見ればある程度までは予測できるからです。

 

可能性が大きいケースから、意外な組み合わせだけどそうなると面白そうだというケースまで、自由にイメージを働かせてみましょう。その組み合わせが業界にどんなインパクトを与えるのかシミュレーションしてみると、株価への影響もイメージできるようになってきます。

 

中には、合併や買収などの企業再編が、今まさに起ころうとしている業界もあります。
業界全体が成長途上にある業界では、業界全体の成長に応じて、個別企業の業績も成長しますので、あまり業界再編は起こらないものですが、業界全体が成熟していて、あまり先行きの成長が望めないときは、可能性は高まります。例えば、少子高齢化の影響を受けやすい業界などです。

チェックするのは「時価総額」と「PER

業界地図を眺めるときには、ぜひ、「2つの数字」も一緒に読んでいきましょう。数字が示す現実を読んでいけば、予測の精度はますます高まるのです。

 

一つ目の数字はもちろん、企業の大きさを示す、「時価総額」です。あらかじめ時価総額も示した業界地図があるなら、便利ですね。

 

時価総額を見るのは、時価総額が小さければ小さいほど、買収が容易に進むからです。時価総額が下がった瞬間を狙って株を買い占めれば、大株主となってお目当ての会社の経営権を手に入れるのに、投資金額が少なくて済みます。

 

ですから、業界地図を見るときは、「売上高」で業界内の順位を見るのではなく、「時価総額」で順位を見る癖をつけてください。業界地図の見方がみるみるうちに変わってくるはずです。

 

もう一つの数字は、「PER」です。株価の割安感を見極めるこの指標も、業界地図を見る際には、業界内で見比べる癖をつけてください。

 

会社を買収する立場になって考えてみましょう。買収するなら、できるだけ安い価格でよい会社を手に入れたいはず。ですから、「株価が割安」(=本来の会社の価値は高い)で、発行株数が少ない、時価総額が小さな会社がお買い得なのです。お買い得ということは、買われる確率が高くなるということ。となると、業界大手のターゲットがどのあたりになるのか、自然と見えてくるというわけです。

 

 

例えば、少子高齢化の影響を受け、再編・淘汰が進むと考えられる業界として、ハム会社つまり食肉加工業界が考えられます。食肉は、高齢者よりも若い人たちや子どもに需要が大きいので、高齢者が増え若者が減ると、需要もしぼむと考えられるからです。現に、2015年9月15日には、食肉加工2位の【2284】伊藤ハムが、7位の【2290】米久と経営統合する方針を固めたとの報道がありました。

 

そこで、食肉加工会社をチェックしていくと、ハム関連の時価総額の第1位は【2282】日本ハム。一方、【2281】プリマハムや【2288】丸大食品の時価総額は、米久と大差ない規模だということがわかります。伊藤ハムと米久の経営統合により、両社のハム・ソーセージ事業の国内シェアは日本ハムを抜いて首位に立つ見込みですが、日本ハムだって黙って指をくわえて見ているとは思えませんね。

本連載は、2015年11月19日刊行の書籍『投資のプロが実践! 株で儲ける日経新聞の読み方』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

投資のプロが実践! 株で儲ける 日経新聞の読み方

投資のプロが実践! 株で儲ける 日経新聞の読み方

藤本 誠之

リベラル社

"相場の福の神"こと藤本誠之が株式投資に本当に役立つ情報の見分け方や、確実に利益を上げる方法を教えます。「日本経済新聞のどこを読めばいい?」「これから上がる銘柄をどうやって探すの?」「ネタを速く仕入れるためにする…

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