高齢者の多くは「家で最期を迎える」ことを望む
高齢期の生活において大切なことは、「住み慣れた場所で、気心の知れた人に囲まれて自立した生活を送ること」であると私は考えます。そしてその場所は、多くの人にとって自宅であることがほとんどです。
ですから入院している患者に対しても、基本は「家に帰す」ことを前提に治療方針を立てていかなければなりません。この前提は絶対に忘れてはならないものです。それは国が家に帰すことを推奨しているからではありません。高齢者の多くが「家に帰る」ことを望み、家で最期を迎えることを望んでいるからです。
[図表]最期を迎えたい場所
病院・施設の役割は患者を自宅へ帰す「橋渡し役」
特に、病院と家との中間に位置する介護老人保健施設なども、できるだけ家に帰すことを目的とし、自立度を上げるような介護と看護を行う必要があります。「寝かせきり」にしないのは当然のことですが、医療機関に負けないレベルのリハビリの充実も必要です。
たとえば自宅内の段差に対応する身体機能、着替えや入浴、排泄への対応、認知機能の維持・回復など、一人ひとりに必要なプランを構築し実践していくようなきめ細かいリハビリ力が求められることになります。
そのためには、その人の生活背景を入念にチェックする必要が出てきます。ひとり暮らしなのか、介護する家族がいるのか。必要な住宅環境やさまざまな利用できる介護サービス、かかりつけ医は誰になるのかなど、チェックすべき点はたくさんあります。
もし病気で入院し、体力が落ちてしまったとしても、毎日の生活を問題なく送れる程度の体力や筋力をつけ、その間に住居の環境を介護可能な状態に整えなければなりません。入院患者を自宅へ帰すための「橋渡し」が、高齢者の入院を受け入れる病院や介護施設の役割であるべきなのです。