2015年より、新規入居者は要介護度3以上に限定
前回の続きです。
では、実際に施設にはどのようなタイプのものがあるのでしょうか。それぞれの特徴を解説していきましょう。
●主な設置主体
地方公共団体、社会福祉法人
●サービス形態
介護保険利用基本的な性格要介護高齢者のための生活施設
●条件
要介護3以上
●居室タイプ
基本的に個室だが、多床室も有
●医師の配置基準
入居者100人に対し1人(非常勤可)
●看護師の配置基準
入居者30人に対し1人、50人までで2人、130人までで3人(夜間の常駐は義務なし)
●医療依存度
胃ろう、インスリンは許可する施設が多い。気管切開、点滴は断られることもある
●入居一時金
なし
●月額利用料
5~20万円
●入居難易度
地域にもよるが待機者が多い
「特養」と呼ばれる施設で、病気や障がいなどのため在宅での療養が難しい高齢者のためにつくられたものです。比較的手頃な料金のため人気が高く、一度入居したら看取りまで過ごしたいと考える人が多いため、入居待ちが数百人というような施設もあるようです。
その人気から、認知症の症状が重い人や、介護度の高い人が入所できなくなっていることを踏まえ、国は2015年4月から原則として「新規入居者は要介護度3以上の高齢者に限定する」という方針を打ち出しました。
しかし、軽度の要介護者であっても、日常生活がままならないような症状や行動がある場合や、深刻な虐待が疑われる場合、家族や地域の支援が不足しているといった特別な事情がある場合は、特例入所が認められることもあります。
利用料は要介護度によって異なり、基本的には要介護度が高くなるほど、料金も高く設定されていますが、収入や課税額によって補助を受けることができます。
居室のタイプには「従来型」「ユニット型」と呼ばれる2タイプがあります。ユニット型は、入居者の居室は個室となっており、10人程度をひとつの生活単位としてダイニング、ロビー、キッチン、浴室、トイレなどを共有し、より家庭的な雰囲気のなかで暮らすことができます。
洗濯、掃除、食事、着替え、入浴など生活に関する基本的な生活支援のサポートはしっかり受けられますが、医療面に関してはやや不安があります。医師は常在していないことが多く、1〜2週に1度の往診という形がとられているケースが多いです。
また夜間は看護師が不在でもよいという規定になっているため、医療連携がされていない施設の場合、夜中に入居者の体調に異変があると、救急車を呼んで対応する場合もあります。
介護度が高く、終末期を過ごす入居者も多い
介護度の高い入居者の多い特別養護老人ホームには、終末期を過ごしている方が大勢います。そうした利用者に対してどのような対処をするか、配置されている医師や看護師がどのような指示を介護スタッフに与えるかで、入居者の最期が穏やかなものになるか、苦しいものになるかが決まってきます。
たとえば、延命治療を希望していない入居者が心肺停止になった場合、慌てて救急車を呼んでしまえば延命治療が施され、本人の望む穏やかな最期とはほど遠いものになってしまいます。年齢的にも、本人の体力的にも、そうした事態がいつ起こってもおかしくない入居者については、本人の意思を確認しておくことが何より重要です。
さらに、病院の医師と介護施設との連携も必要です。この連携がうまくいっていないと、救急車を呼び病院に搬送しなければならないばかりか、施設で亡くなってしまった場合には警察が介入する事態になってしまうことがあるのです。
医師は、連携する介護施設に看取りが必要な利用者がいれば、定期的に巡回します。さらに介護スタッフには入居者の状態と起こりうる異変を日頃から伝えておき、万が一入居者に異変があった際には、医師に連絡をして指示を仰げるようルール化しておきます。
[写真1]特別養護老人ホーム
[写真2]特別養護老人ホーム