前回は、「介護付き有料老人ホーム」の特徴を取り上げました。今回は、「介護老人保健施設」の特徴を見ていきます。

「従来型」と「在宅強化型」に大別される

●主な設置主体

地方公共団体、医療法人、社会福祉法人

 

●サービス形態

介護保険利用

 

●基本的な性格

自宅復帰を目指し、医学的管理、介護、機能訓練、日常生活上の世話を行う

 

●条件

要介護1以上

 

●居室タイプ

1~4人

 

●医師の配置基準

100人の入所者に1人の常勤

 

●看護師の配置基準

100人の入所者に9人、リハビリ専門職1人

 

●医療依存度

病状が安定していれば酸素吸入、経管栄養、人工肛門など可。認知症可

 

●入居一時金

0円

 

●月額利用料

5~20万円

 

●入居難易度

入所待ちあり

 

介護老人保健施設は在宅復帰施設に位置づけられており、家に帰すことを第一目標に置いた施設です。したがって生活の支援や介護だけでなく、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などによるリハビリにも力を入れています。

 

また、医師が常勤することが義務づけられているため、経管栄養や人工肛門など、ほかの施設では受け入れてもらえないような医療依存度の高い患者も入所できる可能性があります。医師のいる安心感、リハビリの充実度などが魅力的なため、入所を希望する人も多くいます。施設側も希望があればそのまま受け入れてくれるケースがほとんどです。

 

しかし、あくまで自宅へ戻るまでのリハビリ期間や、特別養護老人ホームなどの長期入所型施設を探す間に限って居住する、橋渡し的な立ち位置となるため、3カ月で入所者に退所を促すのが本来の姿です。当然、看取りに関しても特別養護老人ホームほど充実はしていません。

 

現在、介護老人保健施設は、長期入所をしながら診療を受けられる「従来型」と、在宅復帰率50%以上が義務づけられている「在宅強化型」に大別されます。さらに従来型のなかでも在宅復帰率が30%以上であれば、「在宅復帰・在宅療養支援機能加算」が取得できます。この加算がとれている介護老人保健施設は、いずれ在宅強化型へと移行する可能性が高いでしょう。

 

近年は、「利用者を在宅へ復帰させる」という介護老人保健施設の本来のあるべき姿を取り戻すべく、在宅強化型や在宅復帰・在宅療養支援機能加算をとる施設が増加しています。その理由には、在宅復帰を目指す入所者のニーズに加え、国の在宅への誘導が大きく関係していることが考えられます。療養病床の転換施策によって、医師の顔が見える介護老人保健施設の役割は、今後ますます大きなものになるはずです。

「看取り」まで行う体制に切り替えていく必要も

また介護老人保健施設のなかには、認知症ケアに力を入れている施設もあります。実際に私の法人が運営する「まこと老人保健施設」は、認知症専門棟としての機能をもっており、回想法などの認知症のリハビリを行っています。徘徊などの周辺症状が進んだ認知症患者でも利用ができ、専門的なケアによって症状を抑える効果も期待できます。

 

今後、医師が常駐する介護老人保健施設では、看取りまで行う体制に切り替えていく必要があるでしょう。一人ひとりの入所者の状態を把握し、延命治療を希望するかどうかも事前に話し合っておき、家族との連絡も密に行うことが大切です。

 

また、リハビリ専門職は常にリハビリの目標と実践、結果に対する考察を継続して、自宅へ帰ることを希望している人が、できるだけ自宅復帰ができるようにサポートしなければなりません。

 

もちろん胃ろうの造設をしている人を含め、嚥下機能のリハビリ、口腔ケアも重要になります。

 

介護老人保健施設では少数精鋭の「チーム医療」が求められる上、各入所者の主治医との連携も行わなければなりません。その点、母体となる病院を持った介護老人保健施設であれば、連携体制がつくりやすく理想的だといえるでしょう。

 

[写真1]介護老人保健施設 リハビリルーム

法人内介護老人保健施設
法人内介護老人保健施設

 

[写真2] 介護老人保健施設 自然光が爽やかな食堂

法人内介護老人保健施設
法人内介護老人保健施設
医療・介護連携で実現する 高齢者のための地域医療

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佐藤 貴久

幻冬舎メディアコンサルティング

2025年には団塊の世代がすべて75歳以上となり、全国民の3人に1人が65歳以上になると予想されています。これまでと同じ医療体制を続けていては、高齢者は自分の望む最期を迎えられないばかりか、増える高齢者によって医療費が膨…

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