原則的に「現物出資の制限」は撤廃
Question 現物出資
現金以外で出資することは認められますか?その場合の制限について教えてください。
Point
●設備機械、知的所有権などによって出資することが認められている。但し、設備機械で出資する場合は、輸入通関を伴う設備に限定され、出資に際しては商検局の鑑定が義務付けられる。
●不動産や土地所有権による出資は、法律上は認められているが、実務上は、中国出資者の払い込みに限定されており、外国企業の不動産による現物出資の事例はほとんどない。
●増資の場合は、外債の資本金転換(デッド・エクイティスワップ)も認められる。
Answer
1.現物出資の原則
2014年3月1日に会社法が改定される前は、現金出資比率を30%以上とすることが要求されていましたので、現物出資は70%以内とする必要がありました。但し、現在はこの制限は撤廃されています。よって、企業の資金繰りに問題が生じない範囲で、現物出資比率を高めることができます。
現物出資の対象となる資産の条件
現物出資については、対象となる資産によって注意点がありますので、その内容を解説します。
❶ノウハウ、特許技術などの無形資産による出資
外国出資者が無形資産によって現物出資する場合は、有効な権利証書(特許証、商標登録証など)のコピー、合弁当事者の価格確認証、鑑定評価書などを提示する必要があります。
独資企業の場合、無形資産による出資は登録資本金の20%以内と定められています(独資企業法実施細則)。
❷設備機械
外国出資者の設備機械などによる現物出資は、商品検験局の鑑定を受けて出資価額を確定させる必要があり(外商投資財産鑑定管理弁法・独資企業法実施細則)、鑑定の結果、資本金額を下回る場合、差額を払込む義務が発生します。
一方、現物出資ではなく現金出資をした上で、親会社から設備機械を買取る方法を採用すれば、この様なリスクは避けられます。
現物出資資産を売却すること(特に海外への再輸出)は、理論上は可能ですが、地域・税関担当者によって、様々な制限が付けられる場合があります。例えば、現物出資資産の売却は減資になるためやるべきではない、若しくは特に免税措置を受けた現物出資資産の場合、国外に再輸出する場合は積戻し処理を行うので、出資時の価格(輸入時の価格)で行う様指示を受ける場合があります。
この様な点を総合的に勘案すると、設備機械は現金出資が必ずしも有利とはいえず、現金出資後の売買とした方が安全かもしれません。
尚、外国出資者による設備機械の現物出資は、輸入通関を伴うものに限定され、中国内設備を出資することはできません。
❸不動産による出資
中外合資企業法では、合弁当事者は、建築物・工場建物・設備機器・資材・工業所有権・ノウハウ・土地使用権により現物出資ができることが規定されています。一方、独資企業法には、現物出資可能資産として、設備機械・工業所有権・ノウハウが規定されています。
外国企業の不動産・土地使用権による現物出資は、法律上禁止されているわけではありませんし、筆者自身も実施した経験がありますが、上記から推測できる様に、これらは中方出資者の出資を想定したもので、外国出資者による現物出資はほとんど実例がありません。また、不動産・土地管理制度もこれに関係しています。
2006年以降、外国企業の中国内不動産購入は禁止されていますので(駐在員事務所のオフィス不動産を除く)、外国企業が不動産を現物出資する場合、対象となるのは、「2006年以前に購入して保有している不動産による出資」、若しくは「駐在員事務所の組織変更による現物出資」の何れかとなりますので、条件が極めて限定されています。
2.債務の資本金転換
外資企業設立時の選択肢ではありませんが、既存の中国現地法人に対する増資を実施する場合、親子ローン(現地法人に対する親会社貸付)を資本金に転換することができます。
この様な貸付金の資本金転換をデッド・エクイティスワップと呼びます。デッド・エクイティスワップの根拠法は、「外商直接投資の外貨管理業務を完全なものにする事に関する通知(匯発[2003]30号)」で、商務主管部門で増資許可を取得(非ネガティブリスト企業の場合は、登記事項変更の届出)する際に、払込方法を対外債務(外債)とし、その後、増資認可と債権者(親会社)が発行した外貨債務の資本金転換確認書を外貨管理局に提示し、外貨債務の解除申請を行います。
尚、資本金転換が認められる債務は外債だけであり、諸預り金、買掛金などの債務は、資本金転換が認められません。