関税免除の対象と税コストの比較
①優遇制度の対象となる項目
前述の通り、増値税の免除制度は打ち切られましたが、関税の優遇制度は引続き有効です。
関税免除の対象となるのは、以下の内容です。
●「国務院の輸入設備税収政策の調整に関する通知(国発[1997]37号)」に定める、国家奨励発展国内投資プロジェクト、及び外商投資プロジェクトの自己使用輸入設備、外国政府借款、及び国際金融シンジケートローンプロジェクトの輸入設備、加工貿易において外国企業が無償提供する輸入設備、及び技術、部材、予備部品など
●「税関総署の外商投資を一層奨励するための輸入税収政策の通知(署税[1999]791号)」に規定する、外商投資企業・外商投資研究開発センターの技術改造、及び「中西部地区外商投資優勢産業目録」に基づき批准された外商投資プロジェクトが輸入する自己使用設備、及び技術、部材、予備部品など
●ソフトウェア生産企業、集積回路生産企業、都市交通プロジェクト、及び「国務院の輸入設備税収政策の調整に関する通知(国発[1997]37号)」に基づくその他のプロジェクトに関わる技術、部材、予備部品など
②税コストの比較
上記①の通り、奨励類外資企業が総投資の枠内で輸入する設備、加工貿易企業の無償提供設備などについては、引続き関税の免除が可能。増値税は免税措置が打ち切られたため、輸入段階で課税されます。
奨励類企業の場合、増値税が課税されても、一般納税人であれば輸入段階増値税の仕入控除・輸出還付が認められ、結果として、関税・増値税双方の負担がなくなります。
一方、加工貿易企業の無償提供設備については、関税は免除されるものの、増値税(17%)を原価処理する必要があるため、税コストとして残ってしまいます。
無償提供設備の場合、なぜ増値税の原価処理が必要かというと、来料加工企業は、元々増値税の免税組織ですので、仕入控除・輸出還付自体が認められないのが理由です。ただ、進料加工の場合は、増値税の課税取引ですので、仕入控除・輸出還付権はありますが、無償提供設備の所有権は外国企業に留保されているため、輸入段階の増値税は、本来外国企業が負担するべきであり、加工貿易企業が負担すべきではない(よって、仕入控除が認められない)という理由により、やはり原価処理が求められます。
関税率は輸入設備の種類によって異なりますが、8~10%程度の税率が適用される場合が多いため、進料加工企業が無償提供設備として保税輸入すれば17%の税コスト(関税は免除されるが増値税は原価処理)となります。一方、一般貿易として輸入すれば、8~10%の税コスト(関税コストのみ。増値税は仕入控除・輸出還付適用)という逆転現象が起こります。
因みに、来料加工企業の場合、一般貿易として輸入すれば、関税・増値税の双方がコストとなるため(来料加工自体が増値税の免税取引であり、企業は増値税の控除・還付が一切認められないため)、無償提供設備として輸入した方が有利です。
免税対象外品目となる設備・機器
免税輸入対象となる企業であっても、以下の設備・機器については免税輸入が認められません。
①家電、輸送機など
テレビ、ビデオカメラ、ビデオデッキ、映像機(再生用ビデオ)、音響設備、空調機(セントラルエアコンを除く)、冷蔵庫、洗濯機、カメラ、コピー機、プログラム制御電話交換機、マイクロコンピューター及び外接設備、電話機、ポケベル、ファックス、電子計算機、タイプライター及び文字処理機、自動車、バイク、その他
②金型
金型は、設備と同時に輸入する場合は免税対象となりますが、単独で輸入する場合は免税措置が認められません(減免税政策執行中の若干の問題を明確にする事に関する通知:署税発[2003]172号)。よって、単独で輸入する金型は関税の免除対象から除外されます。
また、プレス金型は、設備と同時に輸入する場合でも、関税免除は認められません。
③射出成型機・工作機械の一部
「内資プロジェクトの免税対象外品目(財政部[2007]第2号)」第十類第(一)、(二)、(三)項に列記される自社用工作機械・射出成型機(非NC旋盤・NC旋盤・圧力成形機器)については、外資企業が総投資の枠内で輸入する場合でも、関税の免除が認められません(税関総署令[2008]29号)。
④特定の大型・精密・高速NC機器
税関公告[2008]第29号に規定される設備(特定の大型・精密・高速NC機器)を無償提供設備とする場合、手冊管理の対象とはなるものの、輸入関税の免除は認められません。
尚、旧「外商投資産業指導目録」では、製品を100%輸出する許可類外資企業は、奨励類にランクアップすることが認められていましたが、2007年の目録改定に伴い、この様な昇格制度は廃止されました。