原則として禁止されている外資企業の減資
Question
外資企業の減資は可能ですか?
また、中外合作企業の投資先行回収と減資との違いを教えてください。
Point
●外資企業の減資は商務主管部門の許可取得が困難であり、実例は少ない。
●2016年10月1日の三資企業法改定により、非ネガティブリスト外資企業(制限類、及び出資比率などに制限のある奨励分類企業以外)の場合は、減資に関する商務主管部門の許可審査が不要となった。これがどの様な影響を与えるかは、今後の実務状況を確認する必要がある。
●中外合作企業の場合、経営期限満了後に資産を中方出資者に無償譲渡することを条件付ければ、外国出資者は投資の先行回収が認められる。
Answer
1.外資企業の減資
①外資企業の減資の原則
外資企業の減資(経営期限内の登録資本金の減少)は原則として禁止されています。
以前は、完全に禁止されていましたが、2000年の三資企業法(独資企業法・中外合資企業法・中外合作企業法)改定に際して、『外資企業は経営期限内に登録資本金を減少させてはならない。但し、投資総額規模や生産経営規模に変化が生じ、減資が確実に必要な場合は、認可機関の許可を受けなければならない』と条項が改定されたため、(減資許可の取得については、難易度が高いのは確かですが)状況によっては減資が認められることがあります。では、どの様な条件が整えば減資が認められるか、という点ですが、認可機関(商務主管部門)が最も注意する審査ポイントは、「減資による資金減少が、債務の不払いや従業員の大量解雇に繋がらないか」という点です。
そのため、十分な利益と現預金残を有していること(財務状況が良いこと)が、減資許可取得の最低条件となります。また、総投資と資本金には一定の比率が規定されているため(第7回参照)、減資は総投資金額の減少に繋がります。奨励類外資企業は、総投資の枠内で自己使用設備の免税輸入を行うことができますが、すでに枠いっぱいの免税輸入を行っている状況で減資をすれば、理論的には過剰免税輸入となるため、審査に際して問題となる可能性があり得ます。この様な点に基づいて事前判定をした上で、申請する必要があります。
②有償減資と無償減資
減資は、出資資金の払戻しを伴う有償減資と、払戻しを行わない無償減資に分けられます。有償減資とは、出資者に資金を払戻す減資であり、一方、無償減資とは、欠損会社が資本金を減少させ、減資差益で欠損金を減少させる減資形態を指します。
中国にも有償減資・無償減資の双方の概念はありますが、減資事例は少なく、その中でも無償減資は特に困難です。これは、認可機関(商務主管部門)は、許可審査に際して登録資本金の減少という点のみに着目して審査を行う傾向があるため、投資資金の払戻しを伴わない無償減資であるから認可が下りやすいことにはなりません。却って、無償減資を行う会社は欠損金があることが前提であり、財務状況が良いということはあり得ませんので、認可取得が困難であるものです。
③備案制への変更の影響
2016年10月1日の外資三法の改定により、非ネガティブリスト外資企業については、登記事項の変更について商務主管部門の許可審査が免除され、備案(オンライン報告)のみで対応できる様になっています。減資もこれに該当するため、理論的には減資は容易になったものと思われますが、登記変更時の工商行政管理局の手続の際などに行政指導が行われる可能性もあります。
最終的に資産を無償譲渡する形式を想定した規定
2.合作企業の投資先行回収
減資とは異なりますが、中外合作企業は一定の条件の下に、外国出資者が投資資金を先行回収することが認められます。
これは、プロジェクト関連(ホテル、発電、プラント事業など)の様に、高額の資金投下を行い、経営期限内に当該資産を利用した事業運営により利益を確保した上で、最終的に中国パートナーに資産を無償譲渡する形式を想定した規定です。
投資の先行回収は本格的な減資ではないため、登録資本金を減少させず、資本の部のマイナス項目として記帳します。また、合作企業に債務がある場合は、外国出資者は先行回収に際し、それらの債務に対して責任を負うことが要請されています(匯発[2003]30号)。
中外合作企業の投資先行回収は、「合作企業法実施細則」、「合作企業の外国合作者の投資を先行回収に関する審査・許可弁法(財政部令[2005]第28号)」に、以下の通り条件が規定されています。
●合作期間満了時に、企業の固定資産の全てを中国側合作者に無償譲渡することを、合作契約において定めていること
●合作企業が、債務の償還を、投資の先行回収に優先させることを確認すること
●投資の先行回収を行う外国側合作者は、投資の先行回収の範囲内で、合作企業の債務に対して保証を行う旨の保証書を提出すること
●合作企業の出資金が、適切に払込み済であること
●合作企業の経営状況が良好で、欠損金がないこと(赤字の状態での投資先行回収は認められない)
以上の通り、条件付きの回収ではありますが、高額出資を伴うプロジェクト案件で、出資者の資金負担を軽減する意味では検討する意義のある制度といえます。