今回は、中国の現地法人が利用できる借入制度と総量規制について見ていきます。※製造業やサービス業など、多くの外資企業が進出する中国市場。本連載では、中国ビジネスコンサルタントで、Mizuno Consultancy Holdings Limited代表取締役社長・水野真澄氏の著書、『中国ビジネス投資Q&A』(株式会社チェイス・チャイナ)の中から一部を抜粋し、中国ビジネス展開に関する疑問をQ&A方式を紹介します。

総量規制は受けない「中国国内の銀行」からの借入

Question 

 

外資企業の借入額に制限はありますか?

 

Point

 

●中国内の借入については、人民元・外貨共に、総量規制は行われていない。

 

●国外からの借入は、外貨・クロスボーダー人民元共に総量規制が行われる。

 

●総量規制は、投注差(総投資と資本金の差額)に基づく方法と、前年度の自己資本に基づく方法の二種類があり、どちらか一つを選択して継続適用する。

 

Answer

 

1.国内での借入

 

中国内の銀行から借入を行う場合、内資・外資銀行を問わず、また通貨を問わず外貨債務登記などの手続は不要であり、総量規制は受けません。但し、親会社の保証付き借入の場合、借入れる段階では総量規制は行われませんが、保証履行を行う際には偶発債務登記が必要であり、その金額は国外からの借入と同様に総量規制の対象となります。

二種類ある中国国外からの借入方法

2.国外からの借入の原則(外貨・クロスボーダー人民元)

 

国外からの借入は、総量規制の対象となりますが、その方法は二種類あります。

 

①投注差管理

 

外貨の場合は、「外債管理弁法(国家発展計画委員会・財政部・国家外貨管理局令[2003]第28号)」、クロスボーダー人民元の場合は、「外商直接投資人民元決済業務操作細則を明確にする事の通知(銀発[2012]165号)」が根拠となります。

 

これは、国外からの借入(クロスボーダー人民元と外貨の合計)を、定款の総投資金額と資本金の差額に制限する方法です。

 

上記の根拠法に基づけば、外貨短期借入は残高管理であり、返済すれば借入枠は復活する。一方、外貨中長期借入及び全てのクロスボーダー人民元借り入れは、累計額管理であり、返済しても借入枠は復活しません。

 

新借入制度開始(2016年5月)後、明確な法律根拠がないまま、外貨管理局の発言が、「全ての対外借入は残高管理に変更された」、「外貨は残高管理、人民元は累計額管理となる」という様に二転三転しました。

 

但し、現時点(2017年6月時点)では、外貨・人民元ともに、上記の根拠法(外債管理弁法、及び銀発[2012]165号)に基づくという発言に落ち着いています。

 

②純資産管理

 

「調整済借入残高(以下参照)」を、前年度の会計監査報告書の純資産の2倍以内とする方法です。不動産・リース・投資性公司・金融機関以外の企業の計算方法を下記します。

 

調整済借入残高

=クロスボーダー人民元・外貨対外借入残高

×期間リスク調整(注1)×類型リスク調整(注2)

+外貨対外借入残高×為替リスク調整(注3)

 

注1:返済期間1年以下の短期借入は1.5を乗じ、1年超の中長期借入は1を乗じる。

 

注2:オンバランス・オフバランスの類型を指すが、双方1に設定されている。

 

注3:外貨対外借入残高に0.5を乗じた金額を加算する。

 

注4:延払輸入に関する買掛金、輸出代金前受金は計数に加算する必要はない。

 

計算例

 

借入内容(クロスボーダー人民元短期借入50万米ドル相当、外貨対外借入を短期40万米ドル、中長期60万米ドル)の場合

 

調整済借入残高

=50万×1.5+40万×1.5+60万×1

+(40万+60万)×0.5=245万

 

以上の通り、この例では実際の借入額は150万米ドルですが、調整済借入残高は245万米ドルとなります。尚、実際には人民元を管理通貨単位としますので、外貨借入金額は引出し日の為替レート(仲値)に基づいて人民元換算します。

 

3.方法の選択

 

対外借入を行う企業は、2016年5月以降の最初の借入に際して、投注差管理方式と純資産管理方式の何れかを選択し、中国人民銀行・国家外貨管理局に届出る必要があります。

 

一度採用した方法は、原則として、それ以降の変更は認められません。尚、外資企業は二種類の方法から選択できますが、内資企業は純資産管理方式のみ適用可能です。

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    本連載は、2017年9月1日刊行の書籍『中国ビジネス投資Q&A』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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