今回は、不動産関連協会の会費は、賃貸経営における「必要経費」になるのかを見ていきます。※本連載は、税理士・司法書士渡邊浩滋総合事務所代表の渡邊浩滋氏の著書、『大家さん税理士による大家さんのための節税の教科書』(ぱる出版)の中から一部を抜粋し、大家さんのための節税対策として、「グレーな経費の落とし方」について紹介します。

不動産ファイナンス等の情報は業務にとって必要

次の事例は協会の会費を必要経費としていた、というものです。

 

【事例概要】

証券会社の社員であったAさんは、会報に不動産ファイナンス等の情報が記載されているZ協会の会費を必要経費としていた。

 

【Aさんの主張】

Z協会の会報に記載されている情報は業務にとって必要な情報であり、その会費は必要経費に該当する。

 

【調査】

不動産ファイナンスに関する情報が記載されていることは認められる。

 

【裁判所の判断(抜粋)】

Aさんが証券会社の社員であったことに鑑みれば、不動産貸付業に関する記事が会報に掲載されることがあり得るからといって、上記会費が不動産貸付業に係る必要経費に当たるということはできない。

「経費になるから」といって安易に出費をしない

・・・今回も「否認」されたケースですが、この支出は前の二つ(【第6回】【第7回】)と比べてどうでしたか? 実際の支出もあり、その内容も賃貸経営と結びついているように見えます。「必要経費」といってもいいような気もしますが、結局、Aさんの「職業」という部分で「否認」されてしまいました。この会報は賃貸経営ではなく、Aさんの「会社員」としての仕事に関連するものである、という判断がされたということです。

 

少し厳しい判断のような気もしますが、「経営主体=個人」という構造の特性からこのような結論に至ったということです。つまり、賃貸経営以外の「自分の生活」と結びつけられてしまうと、「不動産所得」の「必要経費」と認められず、単なる「生活費」扱いになってしまう、ということです。

 

賃貸経営を始めるからといって職業を変える、というのはもちろん現実的な判断ではありません。今回のケースで、仮に「必要経費」に該当しないことが最初から分かっていたら、あえてその会費を支払わなかったかもしれません。事前にその出費が「必要経費」に該当するかよく調べ、なんでも「経費になるから」といって安易に出費をしないことです。

大家さん税理士による 大家さんのための節税の教科書

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