今回は、関連書類はもちろん、人柄やSNSなどもチェックの対象とされる、「税務調査」への対応策について見ていきます。※本連載は、税理士・司法書士渡邊浩滋総合事務所代表の渡邊浩滋氏の著書、『大家さん税理士による大家さんのための節税の教科書』(ぱる出版)の中から一部を抜粋し、大家さんのための節税対策として、「グレーな経費の落とし方」について紹介します。

税務調査で「有効な証拠」が提示できなかったので…

さて、この章では「経費」をテーマに、5つの事例を取り上げました。

 

そのうち、第6回第7回第8回の3つの事例のAさんは同一人物です。Aさんは他にも多額の経費を計上し、その中には実在の疑わしいものも数多く含まれていました。

 

事例を見た皆さんの感想はいかがだったでしょうか。納得いかない部分もあったかと思いますが、国側の判断も多少理解できる部分もあったかもしれません。

 

所得税という税金は、自分で計算し、自分で申告をする「申告納税方式」です。国側がその申告内容に疑わしい点があれば、「税務調査」という手続きでその申告内容を確認します。今回のAさんも、最初に「税務調査」を受け、その調査の結果に納得がいかなかったため、「税務訴訟」という手段に移っています。

 

「税務調査」は、税務署の職員が訪ねてきて、収入や経費の内容の確認をしていきます。Aさんはこの「税務調査」の段階で、「必要経費」について有効な証拠を提示できなかったため、「否認」につながってしまったのです。

わかりにくい部分を、努力して「わかってもらう」

調査の手法は色々とありますが、調査官は申告の内容と同時にその申告者、つまり本人の人柄も見ています。「この人は不正な行いをする人かもしれない」「この人は書類の管理がズサンだ」などと思われれば、調査も念の入ったものになるでしょう。Aさんのように、証拠書類が無かったり、関係者の主張がちぐはぐだったりすると、「ほかの部分はちゃんとやっているのか」という疑問を抱かせることになります。「個人事業主」には「税務調査」が来ない、などということはありません。普段から書類の管理などは丁寧にやっておくべきなのです。

 

また、今は多くの人が自分の行動をSNSに投稿しています。もし、物件調査として交通費の証拠書類を残していたとしても、同じ日のSNSには家族旅行の様子が掲載されていれば、その交通費は「否認」されることでしょう。逆に、セミナーに参加した様子や、情報交換の場に参加した様子をSNSに掲載すれば、その出費について、「必要経費」だと主張する根拠の一つになります。

 

架空の経費や生活費を「必要経費」にしよう、というのはそもそも誤りです。実際に賃貸経営に関連する出費をいかに「必要経費」にしていくかが重要なのです。もともと「わかりにくい」部分があるのですから、こちらが説明する努力をしなければ「わかってもらう」ことは難しいのです。

 

[図表]有益な節税の3つの柱

大家さん税理士による 大家さんのための節税の教科書

大家さん税理士による 大家さんのための節税の教科書

渡邊 浩滋

ぱる出版

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