髪の密度が低下する脱毛症全般を指す「びまん性脱毛症」
前回の続きです。
●びまん性脱毛症
「びまん性脱毛症」とは、慢性に経過して、髪の密度の低下が見られる脱毛症全般を指します。先にご説明したFAGAと慢性休止期脱毛症のほか、加齢変化による脱毛症や、明らかな軟毛化を伴わない若年性の脱毛症もこのびまん性脱毛症に分類されます。
[図表1]びまん性脱毛症の女性
〈症状の特徴〉
●髪の密度の低下(疎毛化)が見られる。
●慢性に経過している。
〈原因〉
・FAGA
・慢性休止期脱毛症
・加齢変化
・生まれつき
精神的ストレスが引き金になることが多い「円形脱毛症」
●円形脱毛症
「円形脱毛症」は、成長期毛の毛球部に何らかの激しい炎症が起こり、毛母細胞が同時に死滅するために発症します。ただ、毛包の再生にとって最も重要な毛包幹細胞のあるバルジ領域は障害されませんので、炎症が治まれば毛母細胞も再生、回復します。
円形脱毛症には単発型、多発型、全頭型、汎発型など、いくつかの種類があり、症状の出方にも個人差があります。
俗にいう〝10円ハゲ〟は「単発型」ですが、それが複数できる場合は「多発型」となり、その範囲が広がって、すべてつながってしまうと「全頭型」となります。
円形脱毛症は、ほかの脱毛症と比べると進行の速度が速く、病的な抜け方をするのも特徴です。髪はまばらに薄くなるのではなく、発症部位はすべて抜けてしまいます。
円形脱毛症は自己免疫疾患によるもので、精神的ストレスや薬剤によるアレルギー、ウイルス感染、頭皮疾患などを原因として、毛包由来の自己抗原をターゲットにした自己免疫反応が誘発されます。ただし、幼児期に発症するケースもあるため、一概にストレスなどによるものと断定することはできません。
なお、アトピー体質を持っている人に起こりやすいこともあり、アトピー性皮膚炎と円形脱毛症には密接な関係があると考えられています。
円形脱毛症の患者分布は、30歳以下で発症する場合が80%。特に15歳以下で発症する割合が全体の4分の1と、若い世代に多いことも特徴です。
[図表2]円形脱毛症の女性
〈症状の特徴〉
●脱毛斑が円形、または楕円形であり、境界が比較的はっきりしている。
●抜けた髪の毛の毛根部分が、細くとがった状態になる。
●脱毛斑の周囲の毛を引っ張ると簡単に抜け、痛みもほとんどない(易脱毛性)。
〈原因〉
精神的ストレスが引き金になることが多く、遺伝的な要因もありますが、多くの場合は原因不明です。
この話は次回に続きます。