男性ホルモン優位になると、男性型脱毛症が起こる
ここまでは女性ホルモンの減少が薄毛の要因のひとつというお話をしてきました。さらに、女性ホルモンが減った結果、相対的に優位となる男性ホルモンについても解説しておきましょう。
女性にもテストステロンを代表とする男性ホルモンがあるとお話ししましたが、その女性の中の男性ホルモンが薄毛につながることがあります。先にご紹介した男性の薄毛のメカニズムを思い出してみてください。
男性の薄毛は、毛包の中のⅡ型5αリダクターゼという酵素と、テストステロンという男性ホルモンが結びつき、ジヒドロテストステロン(DHT)という物質を生成することから始まります。さらに、このDHTが、髪の毛に悪影響を与える遺伝子群に作用し、脱毛を促進させるTGF-β1などのタンパク質を発現させることで、薄毛が引き起こされるとお話ししました。
女性ホルモンが減少し、男性ホルモンが優位となった女性にも、この男性ホルモンにまつわる薄毛のメカニズムがそのまま当てはまります。これが先にご紹介した「FAGA(女性男性型脱毛症)」です。
行き過ぎたダイエットや偏食も薄毛の原因に
さて、過度のダイエットや偏食は特に若い女性にありがちなことです。しかし、行き過ぎたダイエットをしたり、偏食であったりして栄養摂取が十分でないために、薄毛が起こることがあります。
私のクリニックに薄毛の相談に見える女性の患者様にも、こうした栄養不足のケースがあります。髪をつくるうえで欠かせないタンパク質をはじめ、ビタミン、ミネラルなど栄養が全般的に不足しているのです。その一方で、パスタやパン、お菓子など、炭水化物の摂取が多過ぎる場合もあります。
ところが、こうした女性たちは自分の栄養不足を自覚していないことがほとんどであるのが、また問題です。「自分はだいじょうぶ」と思っていても、ときに意識して、自身の食生活をきちんと見つめ直すようにしましょう。第2章でもお話ししたとおり、いろいろな栄養をバランスよく摂取することが、薄毛対策としても非常に大切なのです。
たとえダイエットや偏食などの問題がなく、普通に食事をしている女性であっても、髪の毛を成長させるのに十分なほどは栄養が足りていない人も少なくありません。まして、生まれつき髪が薄い方の場合は、普通の食生活では髪の毛を新たに多くつくり出すのは難しく、十分なタンパク質とビタミンを摂取することが必要です。
それでも食事だけで完璧に栄養を摂取するのはなかなか難しいことです。特に髪をつくる細胞は、細胞が分化・増殖するスピードが体のなかで最も早いため、すべての栄養素を充分に摂らなければなりません。