健康的な生活を送っても「加齢」で薄毛に・・・
女性の薄毛を引き起こす要因にはさまざまなものがありますが、最大の原因は「加齢」です。
実際、特別に問題のある食事や生活習慣などとは無縁で、健康的にごく普通の生活を送ってきた女性でも、薄毛に悩むようになることが少なくありません。その原因のほとんどが、加齢なのです。
加齢自体は誰にも平等に起こり、誰にも止めることができないものです。しかし、女性の場合、その加齢が薄毛の原因になってしまいます。
実際、女性は一般的に、更年期前後の頃に薄毛が気になり始めることが多いようです。特に閉経すると髪の毛が細くなり、休止期に入る毛根の割合が増え、髪の毛の密度が低下してくる傾向がわかっています。また、髪が細くなり、地肌が見えるような状態になることも珍しくありません。
髪の成長と維持に重要な女性ホルモン「エストロゲン」
では、なぜ年齢を重ねると、薄毛が起きてくるのでしょうか? そこに大きくかかわっているのが「女性ホルモン」です。
女性の体内では、加齢とともに、女性ホルモンのエストロゲンが減少していきます。これはごく自然なことですが、このエストロゲンの減少が薄毛に直結しているのです。
そもそもエストロゲンはなぜ髪にいいのでしょうか?
毛包にはER-βというエストロゲンレセプターがあり、これが毛周期に重要な役割を果たしています。すなわち、エストロゲンが毛の成長期を持続させ、成長期にある毛を増やすのです。マウス実験でも、このER -βが欠損していると、毛周期の退行期が早期に起きることがわかっています。
もちろん人間の女性の例を見ても、エストロゲンがいかに髪に影響しているかがわかります。たとえば、妊娠中は毛量が増える反面、出産後には毛量が減ること。避妊のために使用していたピルをやめると抜け毛が増えること。さらに閉経後に脱毛症が進行すること。
また、女性ホルモンの体内での合成に欠かせないアロマターゼの抑制薬を乳がんの抗がん剤として使用すると、しばしばAGA(男性型脱毛症)が見られることなど、枚挙にいとまがありません。
このように、髪の成長と維持のためにはエストロゲンがとても重要。エストロゲンの減少は毛の成長期から退行期、そして休止期への移行を促進し、脱毛へとつながるということです。
こうしたことから、閉経後など加齢によりエストロゲンが減少したために脱毛が進行することが多いのです。なお、エストロゲンの分泌は30歳前後がピークと言われ、加齢とともに右肩下がりに減少します。これは女性の薄毛が進行しやすいことをそのまま意味しています(以下の図表を参照)。
[図表]女性の年齢とエストロゲン量の変化
さらに、エストロゲンは、加齢のほかにさまざまな要因で減少します。過度のダイエットやストレスなどが原因でエストロゲンが減少し、結果的に薄毛が進行してしまうことがあるのです。
ちなみに、出産によるエストロゲンの減少からくる脱毛については、分娩後脱毛症の項で解説したとおり、6カ月ほどで正常に回復するのが一般的です。