今回は、相続税申告書を作成する際の事前準備について解説します。※本連載は、税理士の松本 繁雄氏の著書、『相続・贈与の実務 法務から税務対策まで』(経済法令)の中から一部を抜粋し、相続税額の計算方法や、相続税申告書の作成方法などをご紹介します。

相続財産、債務が「どこに・どれだけあるか」を把握

相続税の申告をする場合には、被相続人の財産と債務の内容を正確に調べ、財産や債務についてどんなものが、どこに、どれだけあるかを把握するとともに相続人、受遺者が誰であるかを確定させなければなりません。

 

相続税の申告書は、次のような準備手順を経て作成します。

 

①相続財産の内容調査

 

②相続または遺贈で取得したものとみなされる財産(生命保険金、死亡退職金など)の内容の調査

 

③債務および葬式費用の調査

 

④申告書に添付する戸籍謄本などの書類の調査

主な相続財産の調査方法

相続税の申告書を作成するためには、相続財産の評価などを調べなければなりませんが、主な財産についての調べ方は次のように行います。

 

(1)土地

 

①所在場所・・・記事項証明書などにより、その土地の所在地番を調べるとともに、地図でその所在場所も調べます。

 

②評価方法・・・路線価方式により評価する土地であるか、倍率方式または比準方式(農地)であるかを税務署に問い合わせます。

 

③面積・・・実測図、登記済証(登記完了証)、売買契約書、固定資産税の課税台帳などにより調べます。

 

④形状、道路との関係・・・路線価方式で評価する土地については、実測図、公図により、または実地調査により、土地の形状、間口の大きさ、奥行きの長さ、道路との関係などを調べます。

 

⑤固定資産税評価額・・・倍率方式で評価する土地については、市町村役場から固定資産税の評価証明書の交付を受けます。

 

⑥利用状況・・・賃貸されているか、貸家の敷地になっているか、小作地(農地)なのか、更地なのかなどの利用状況を調べます。

 

⑦借地権割合、耕作権割合・・・借地権または耕作権の目的となっている場合には、借地権割合または耕作権割合などを税務署に問い合わせます。

 

(2)家屋

 

①所在地番、構造、用途、面積等・・・登記済証(登記完了証)、建築許可申請書、売買契約書などにより調べます。

 

②固定資産税評価額・・・市町村役場で評価証明書の交付を受けます。

 

③利用状況・・・賃貸されているかどうかを調べます。また、借家権の目的となっている場合には、借家権割合を税務署に問い合わせます。

本連載は、2017年6月24日刊行の書籍『相続・贈与の実務 法務から税務対策まで』(経済法令研究会)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続・贈与の実務 法務から税務対策まで

相続・贈与の実務 法務から税務対策まで

松本 繁雄

経済法令研究会

相続税は、平成27年度の税制改正に伴う、納税者の大幅増加と租税回避への動向に効果的に対応する観点から、平成29年度の改正では、①相続税・贈与税の納税義務の見直し、②財産(土地、株式等)の評価方法の適正化、③物納財産…

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