今回は、「相続税がかかる財産の明細書」を記入する際のポイントを解説します。※本連載は、税理士の松本 繁雄氏の著書、『相続・贈与の実務 法務から税務対策まで』(経済法令)の中から一部を抜粋し、相続税額の計算方法や、相続税申告書の作成方法などをご紹介します。

遺産が未分割の場合は記入せず「空欄」のままに

前回の続きです。

 

(4)明細書第11表 相続税がかかる財産の明細書

 

[図表1]相続税がかかる財産の明細書

 

この表は、相続や遺贈によって取得した財産のうち、相続税が課税される財産の価格を計算するとともに、各人ごとの取得金額を計算するために使用します。この表における取得財産には、保険金や退職金などのいわゆるみなし相続財産のほか、生前一括贈与を受けて贈与税の納税猶予または納期限の延長を受けていた農地等も含めることになっています。

 

この表の記載にあたっては、次の点に留意してください。

 

①「財産の種類、細目」欄には、別表の種類、細目欄に掲げる順序で、相続税が課税される財産の種類と細目を記入し、価額欄には細目ごとに「小計」を、また種類ごとに「計」を記入します。

 

②「所在場所等」欄には、各財産の所在場所を記入しますが、次の財産については次のことを記入します。

 

㋑売掛金・・・相手方の住所、氏名または名称

㋺船舶、自動車・・・登録機関の名称と登録番号

㋩有価証券・・・発行法人の所在地と名称(国債、地方債は記入しません)

㊁預貯金等・・・預貯金、金銭信託については預入先店舗などの所在地と名称

㋭その他の債権・・・債権者の住所、氏名または名称

 

③「単価・倍数」欄のうち、「単価」欄には、固定資産税評価額を基として評価する土地、家屋以外の財産について1㎡当り、1株当り、1ha当りなどその財産の単価当りの価額を記入します。

 

「倍数」欄には、固定資産税評価額を基として評価する土地および家屋について、固定資産税評価額に乗じる一定の倍率を記入します。

 

なお、この欄で使用する単価、倍率等については所轄税務署へ照会すれば教えてもらえます。

 

④「分割が確定した財産」欄には、相続税の申告書を提出するときまでに、遺産の分割が行われた財産、特定遺贈の対象となった財産および相続や遺贈によって取得したものとみなされる財産について、その財産を取得した人の氏名および取得金額を記入します。したがって、遺産が未分割の場合は記入せず、空欄のままで構いません。

第12表の「農業投資価格」は所轄税務署にて確認

(5)明細書第12表 納税猶予の適用を受ける特例農地等の明細書

 

この表は、相続人等のうちに農地等についてこの相続税の納税猶予の適用を受ける農業相続人がいる場合に、その農業相続人ごとにその農地等の農業投資価格による価額や、農業投資価格超過額などを計算するために使用します。

 

記入にあたっては、「特例農地等の明細」欄には、明細書第11表に記載した農地等のうち、農業相続人が納税猶予の適用を受けようとするものについて記入します。農業投資価格は、所轄税務署で聞いてから記入します。

本連載は、2017年6月24日刊行の書籍『相続・贈与の実務 法務から税務対策まで』(経済法令研究会)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続・贈与の実務 法務から税務対策まで

相続・贈与の実務 法務から税務対策まで

松本 繁雄

経済法令研究会

相続税は、平成27年度の税制改正に伴う、納税者の大幅増加と租税回避への動向に効果的に対応する観点から、平成29年度の改正では、①相続税・贈与税の納税義務の見直し、②財産(土地、株式等)の評価方法の適正化、③物納財産…

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