発毛の仕組みを知ることで、薄毛を正しく理解する
人はなぜ薄毛になるのか、男性と異なる女性特有の薄毛とはどのようなものか、なぜ、そのような症状が引き起こされるのか……。そんな薄毛の実態について詳しくお話ししていきます。
ただし、その前にあらためて知っておきたいのが髪の毛そのものについてです。髪の毛の構造や、髪が生える仕組み、自然な抜け毛の経緯など、髪について詳しい知識を得ることが、薄毛を正しく理解するためのヒントにもなります。そこで、まずは発毛のメカニズムについて学んでいきましょう。
「毛母細胞」が分化・増殖することで髪は伸びる
さて、私たち人間の毛髪はいったい何本くらい生えているか、ご存知ですか? 平均では約10万本ですが、人によって6~14万本と幅があり、多い人では15万本といわれます。
ちなみに、ひとつの毛穴からは髪が1本だけでなく複数生えていることがほとんどです。では、その毛髪の構造はどのようになっているのでしょうか。毛髪の組織構造を見てみると、細い髪の毛なのに、中はこのようになかなか複雑な構造をしています。
図表1のように、頭の表皮、俗にいう地肌の外に出ている「毛幹」が、私たちがふだん髪の毛と呼んでいる部分です。
[図表1]毛髪の組織構造
表皮の下に埋まっている部分が「毛根」。この毛根を包んでいる、さやのようなものが「毛包」です。その周りに細かく張りめぐらされているのが毛細血管であり、これが必要な栄養分や酸素などを送り届けることによって髪の毛は成長していきます。毛根の根元にあるのが「毛球」です。カニのはさみのように先割れした球状で、そのくぼみに「毛乳頭」があります。
毛包の底(毛包基部)にあるのが「毛母細胞」です。この毛母細胞こそが髪の毛のいちばんのもと。この細胞が毛細血管から取り込んだ栄養分や酸素を使って細胞分裂を繰り返し、成長していきます。
すなわち、毛包基部の毛母細胞が、裏打ちする毛乳頭からの細胞成長因子(KGF、IGF-1)からのシグナルを受けることで細胞分裂し、毛髪と毛包の組織に分化します。この過程で毛は上へ上へと伸びるとともに毛母細胞が角化して、硬い髪の毛へと育っていくのです(図表2参照)。
[図表2]毛包に作用する細胞成長因子
さらにKGF、IGF-1などの細胞成長因子の働きによって、毛母細胞は持続的に分化・増殖し続けることができるわけです。これが髪が伸びて成長するメカニズムです。