今回は、介護サービスの質にも影響を及ぼす、高齢者住宅の建物や設備の重要性について考察します。※本連載では、介護ビジネスや高齢者住宅の経営コンサルティングも行う社会福祉士、介護支援専門員の濱田孝一氏の著書『「老人ホーム大倒産時代」の備え方』(扶桑社)から一部を抜粋し、介護生活に備えた、高齢者住宅の選び方を具体的にレクチャーしていきます。

「生活支援サービス」に重点を置く人は多いが…

高齢者住宅は、建物・設備などの「住宅サービス」と、介護や食事などの「生活支援サービス」の複合サービスだと述べました。高齢者住宅選びにおいては「生活支援サービス」に重点を置いて、チェックする人が多いようです。

 

ただ、この2つのサービスは、それぞれ独立、分離しているのではありません。

 

建物や設備は、高齢者の事故リスクや介護サービスの質にも大きく影響します。そのため、事業者の高齢者住宅ビジネスへの理解度、ノウハウをはかる上でも、重要なチェックポイントです。

 

[図表] 建物・設備と介護サービスの関係

 

 

安全性は「バリアフリー基準」のクリアだけではない

高齢者住宅の建物・設備設計の基礎は「安全性」です。

 

それは、有料老人ホームやサ高住の安全基準、バリアフリー基準をクリアしていればよいというものではありません。同じ開き戸でも、右麻痺、左麻痺によって開けやすさは変わってきます。エレベーターは車椅子でも利用しやすいものか、電気のスイッチは手の届くところにあるのかを確認しなければなりません。

 

ベッドの向きも重要です。通常は、スタッフコールが頭の上にくるようにベッドを置くことになりますが、麻痺の部位によってベッドから降りやすい向きは変わってきます。

 

たとえば、左半身麻痺の人は右手でベッド柵をつかんで起き上がり、身体を回転させ、右側に足を降ろします。麻痺のある左側には降りにくいのです。それによって、降りたときの車椅子の向きも変わってきます。車椅子利用者が、狭い居室内で、一人で進行方向を変えるのは大変なことです。ですから、ベッドの向きによって、居室内の使い勝手、生活や介助のしやすさは大きく変わってくるのです。

 

健常者には取るに足らない小さなことでも、身体機能の低下した要介護高齢者にとっては大きなバリアになります。建物・設備の豪華さや美辞麗句に惑わされるのではなく、実際の生活、要介護状態をしっかりイメージして選ぶことが必要です。

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    本連載は、2017年6月10日刊行の書籍『「老人ホーム大倒産時代」の備え方』(扶桑社)から抜粋したものです。稀にその後の法律、税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    「老人ホーム大倒産時代」 の備え方

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    濱田 孝一

    扶桑社

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