緊急性を要さないため、対策が後回しになりがちに…
高齢者住宅のチェック項目で、見落とされやすいのが「防災設備・防災対策」です。
火災や自然災害は命に関わる重大リスクです。火災や地震が発生すれば、多くの要介護高齢者は逃げることができないため、死傷者が増え、大惨事に発展します。しかし、同時に緊急性を要するリスクではないため、「そのうちに・・・」「忙しいから・・・」と後回しにされやすいものでもあります。
ですから、防災設備・防災対策は、高齢者住宅のリスクに対する理解、サービス管理体制、サービスの質が如実に表れる重要ポイントなのです。
事業者の「防災対策」をチェックするポイント
●防災設備をチェックする
耐震耐火基準、定員数、制度種別を問わず、スプリンクラーや自動通報装置は高齢者住宅に不可欠な設備です。有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅とでは、消防法上の取り扱いが一部違うのですが、単なる制度矛盾であり、高齢者が災害弱者であることは同じです。「制度上、設置義務がないから・・・」という事業者は、災害リスクを理解していないということです。
防災設備が整っているだけではなく、防火扉の前に段ボールが積まれていないか、万一の事態に備えて、食料や飲料水、日用品などの必要な備品が備蓄されているかなども見学時の重要なポイントです。
●防災に関する契約事項をチェックする
入居者に対する契約事項にも関わってきます。
多くの高齢者住宅では居室内でのタバコを禁止しています。仏壇のお線香やろうそく、さらには火災の原因となる電気ストーブなども規制されています。
万一の失火となった場合、その人一人の被害では済まなくなるからです。
カーテンや毛布なども、防炎のものを推奨しているところもあります。
「施設ではなく、個人の住居ですから規制はありません」などと言うところは、災害のリスクに対する意識が低いのです。
●防災訓練をチェックする
防災訓練からは、その事業者の防災対策、管理者・経営者の実力が見えてきます。
介護スタッフが、泣きそうになりながら、大声を上げて真剣に防災訓練を行っている事業者と、チャラチャラと笑いながら、レクリエーションのように楽しそうに行っている事業者・・・どちらが、厳しい視点でサービス管理、リスク管理を行っているのか、どちらの介護スタッフが安全に対する意識が高いのかは、一目瞭然です。
地域の消防署やその地域の町内会、自治体と共同で、夜間想定の火災訓練、地震に対する訓練などを行っているところもあります。
「防災訓練は忙しいからできていない」「防火管理者は退職していて、後任はまだ決まっていません」といった事業者は論外です。厳しい言い方をすれば、「入居者の安全を守る気がない」ということです。
[図表]事業者の質が見える防災対策