条例により東京23区全域で1Rマンションの供給を制限
さまざまな要因で都心の賃貸需要は高まっていますが、一方でワンルームマンションが次々に建設されているかというとそういうわけではありません。
[図表1]
図表1のように、平成19~20年を境に床面積20㎡(平方メートル)以下の住宅着工数は大きく下がっています。これは、平成19~20年に設けられた「ワンルームマンション規制」の影響です。東京23区全域でワンルームマンションの建築は、条例もしくは指導要綱で規制を受けているため、新規で建築する際の建築条件が厳しく供給が制限されるようになりました。
例えば、渋谷区では28㎡(平方メートル)未満のワンルームマンションの建築は禁止になり、千代田区では神田駅の西口周辺にはワンルームマンションが今後建築できないといった条例などがあります。多くの区では、ワンルームマンションを建築する際に、一定数のファミリーマンションを確保することを条件とした条例や指導要綱が設けられているのです。これらの規制を通称「ワンルームマンション規制」と呼びます。
[図表2]
以前であれば、都心の古い雑居ビルを解体して、少ない土地に高い建物が建っているいわゆるペンシルマンションといったようなワンルームマンションが、都心で建設されていました。
しかし、一定数ファミリーマンションを入れるとなるとペンシルマンションの建設は困難になり、都心における新規のワンルームマンション供給は厳しい状況があるのです。そのため、ワンルームマンションの供給エリアは、23区でも都心を除いたエリアに広がりました。
ライバル物件が増えず、収益を確保しやすい状況に
本連載では、アパートの建築が増え空室率が急上昇したことについて伝えましたが、それは地方の話で都心では人口が増え入居需要が上がっているにもかかわらず、ワンルームマンション規制のために供給は制限されているという、地方とは真逆の現象が起こっています。
ライバル物件が多くなれば家賃の下落は起こりやすく、一方でライバル物件が少なくなれば多少家賃が高くても入居者を確保できるため、空室が少なくなるのは当然です。図表3のように建築に関する規制がないエリアの物件は当然ライバルが多くなり、家賃の下落が急速に進みます。
しかし、ワンルームマンションの建築規制がされている23区では、物件の供給が抑えられているため、ライバル物件が増えづらい環境があり空室率の上昇を抑えることができているのです。
さらにいうと、ワンルームマンション規制の影響で、今後建築の見込みが少ない都心のワンルームマンションは、さらにライバル物件が増えないので収益を確保しやすいと言えるでしょう。収益物件では収益性で物件価格が決まるため、建築の際に制限があればあるほど資産価値は維持されやすくなります。
[図表3]