今回は、「国際仲裁市場」が成長を続ける理由を見ていきます。※本連載は、オリック東京法律事務所の外国法共同事業訴訟部、代表パートナーの髙取芳宏氏と、同じくオリック東京法律事務所の外国法共同事業訴訟部パートナーの矢倉信介氏の編著、『最新 クロスボーダー紛争実務戦略』(レクシスネクシス・ジャパン)より一部を抜粋し、国際仲裁の迅速化と費用節約の方策について説明します。
国際貿易の拡大に伴い、国際仲裁も増加
国際貿易が急速に発展し、同時に国際取引から生じる紛争に対する信頼のおける解決システムが必要となっていることから、国際仲裁市場が成長している。この事実は国際貿易取引及び国際商業会議所(ICC)の取扱件数を並べた次の図からも見ることができる。
[図表1]世界の国際貿易取引
[図表2]ICCの取扱件数 1921年〜2008年
世界貿易機関(WTO)が上記データを発表して以来、取引総数は増加し続けている。第二次世界大戦以降、さまざまな世界危機があったにもかかわらず、国際貿易取引もICCの取扱件数も大きく減少していないことは、注目に値する。
仲裁機関が管理する事件数も同様に増加傾向
ICCの取扱件数が増加しているのと同様に、その他ほとんどすべての仲裁機関で取扱件数が増加している。以下の表は、主要な仲裁機関の最近の取扱件数を示したものである(※)。
(※)この表は当初、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)のウェブサイトに掲載され、各機関から取得した統計に基づいている。
[図表3]仲裁機関が管理した国際事件の数
オリック東京法律事務所
外国法共同事業訴訟部
代表パートナー
1998年ハーバード大学ロースクール卒業(LL.M.)。日本及び米国ニューヨーク州の弁護士資格登録。英国仲裁人協会(CIArb.)所定の上級仲裁人(FCIArb.)。日本仲裁人協会(JAA)常務理事、英国仲裁人協会・日本支部共同代表。主に複数の管轄にまたがる民事、商事、知的財産権、製造物責任、独占禁止法等の国際訴訟・仲裁を扱い、FCPA、UKBA、のコンプライアンス事案、内部通報を含む労働法関連紛争などを手掛ける。
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連載クロスボーダー紛争実務戦略〜「国際仲裁」利用の迅速化と費用節約のポイント
オリック東京法律事務所
外国法共同事業訴訟部
パートナー
京都大学法学部、ニューヨーク大学ロースクール、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス及び北京大学法学院各卒業。日本及び米国ニューヨーク州弁護士登録のほか日本の弁理士資格を保有。国内外の企業を代理して、主に知的財産権、独占禁止法、製造物責任、労働法及び労働法関連紛争を含む、複数の管轄をまたぐクロスボーダー型紛争解決案件を手掛けるほか、各国賄賂規制、カルテル調査及びサイバーセキュリティを含むコンプライアンス案件についても多くの経験を有する。
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