本連載は、オリック東京法律事務所の外国法共同事業訴訟部、代表パートナーの髙取芳宏氏と、同じくオリック東京法律事務所の外国法共同事業訴訟部パートナーの矢倉信介氏の編著、『最新 クロスボーダー紛争実務戦略』(レクシスネクシス・ジャパン)より一部を抜粋し、クロスボーダー紛争実務戦略〜「国際仲裁」利用の迅速化と費用節約のポイントを説明します。

アジア太平洋地域で著しく進む、国際仲裁の普及

最近10年間で、紛争解決のための手段として、国際仲裁の利用が著しく増加している。既に仲裁が紛争解決手段として定着している地域において国際仲裁の利用が増加しているのはもちろん、新たな地域、特にアジア太平洋地域においては国際仲裁の普及がめざましく進んでいる。

 

こうした活発な動きによって、法律事務所及び仲裁機関の間で市場シェアをめぐる競争が激化し、国際仲裁に関与する者に新たな課題をもたらすことになった。国際仲裁の利用者が口にする主な不満の1つは、手続が不当に長くて費用が高いということである。

国際仲裁の「市場シェア」をめぐって争う仲裁機関

仲裁は、単に法的手続であるというだけでなく一種の市場でもあると認識すれば、こうした不満がより理解できる。

 

かかる市場で主要な役割を果たすのが、弁護士、仲裁人及び法律業務を提供する機関である。仲裁市場には、翻訳、通訳、技術的な専門性、情報技術、宿泊、交通、会議の支援、そして増えつつある第三者融資など、多数の付属業務も含まれる。

 

いかなる市場にもあてはまるが、国際仲裁市場は需要と供給によって影響を受けるし、参入障壁の存在も否定できない。

 

このため国際仲裁市場における競争は厳しく、法律事務所及び仲裁機関が事件をめぐって競い、仲裁人は任命をめぐって競い、仲裁機関が所在する州や地域は、例えばその仲裁法規を近代化し、その州や市内での仲裁業務を奨励するための税制優遇策を提供することによって、市場シェアをめぐって競っている状況である。

 

こうした活発な競争は規制されていない市場で行われており、対象となる金額は少なくとも数億ドルである。最近の調査によると、国際仲裁は、パリ市場だけでも年間約2億ユーロを生み出しているともいわれている。

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