一流アスリートの「ゾーンに入る」になぞらえて・・・
僕は、医学部時代にテニス部に所属しており、一応主将を任されていた身である(テニスといっても、ソフトテニスであるが)。今でもテニスが好きでよく見ているが、特にプロテニスプレイヤーの錦織圭選手の活躍に注目している。今年に入ってからは、ケガの影響もあってなかなか思うような成績を残せておらず、ランキングも下がってしまって残念であるが、彼のメンタルとフィジカルがガチっとはまった時の強さは、見ていても頼もしいし、何でも面白いように決めてくれるので、安心感がある。
ある時、錦織選手の試合を解説していた松岡修造さんが「圭はスーパーゾーンに入りましたよ!」という言葉を発していた。この「ゾーン」という言葉は、「フロー状態」などと言い換えることもできるが、自分自身の理解を超えたところで、最高のパフォーマンスを発揮することが出来ている状態だ。もちろん、日ごろの練習あってこそであるが、錦織選手はこの時、究極的に集中しており、自分の能力の最高状態にあったのであろう。
アスリートの「フロー状態」とはパフォーマンスが桁違いかもしれないが、投資家マインドを構築し、どんどん物件を買っていくことができる状態は、ある意味「フロー状態」にいることが条件となってくる。
慣れ親しんだ習慣に甘んじるのは「comfort zone」
下記の図をご覧いただきたい。僕らは普段この円の中心である「comfort zone」にいる。慣れ親しんだ習慣に甘んじているわけであるが、これは人間として当然の反応である。
[図表]THE RELATION OF STRENGTH OF STIMULUS
TO RAPIDITY OF HABIT-FORMATION
Robert M. Yerkes and John D. Dodson(1908)
「comfort zone」にいるとき、僕らはいわゆる日常にいて「退屈」している状態だ。休日は、誰にも会わず、家でテレビを観て過ごす。平日は、ルーティーンをこなし、いつもと代わり映えのない日々を送る。この時の自分のパフォーマンスがどうかと問われると、はっきり言って平均以下になるだろう。日々の生活に気合が入っているかと問われると、ほとんどの人が「NO」と言うはずだ。
逆に、「panic zone」の時というのは、「恐怖」を感じている時である。新しい職場や仕事に向き合う時、慣れないプレゼンをしなくてはならない時、得体のしれないものを見た時など、日常から外れたところや、初めて経験することにナーバスになりすぎると、ここの領域に達する。
僕は初めてダイビングをした時に、この「panic zone」を経験した。最初からいきなり船で沖合まで連れて行かれ、ものすごく重たい酸素ボンベを背負わされ、突然船から突き落とされるのだ。この①重たいボンベと②突き落とされるという恐怖により、本当は泳げるはずなのに、溺れそうに感じ、ものすごくもがいて、パニック状態になった。それを経験しないと、潜れるようにはならないのだが、一時的に「panic zone」に入り、本来の泳ぎができなくなっていたのだ。
不動産投資を成功に導く「learning zone」への没入
自分が知らないことに挑むから恐怖感が過剰になり(panic zone)、パフォーマンスが下がる。かといって、退屈過ぎても生産性は上がらない(comfort zone)。この間の状態を「learning zone」と呼ぶ。
前述のフロー状態と似ていないだろうか? 退屈でもなく、恐怖も抱いておらず、行動に刺激が伴い、自身が成長している状態である。不動産投資の場合、どうしても、初期は「panic zone」に入らざるを得ない。そのボトルネックを経て、うまく「learning zone」に入ることができれば、余裕が出て、物件をどんどん買っていけるマインドになる。
「comfort zone」から外に出るということは、居心地の良いところから出ることであり、不確かなことへの挑戦をすることになるため、確実にエネルギーを使う。それを怖がってしまうと、いつまでたっても成長はない。
誰もが初めての経験に対して、「panic zone」に陥ることがなんとなく分かっていると思う。だから、足がすくんでしまうけれども、誰かそこに一緒に行ってくれる人がいると、とても安心できるはずだ。経験済みの人、メンター、彼らは確実に、僕たちを「panic zone」から救ってくれて、一緒に乗り越えてくれる。不動産投資の場合、僕がそうであったように、1棟目はどうしても「panic zone」に入る。それを落ち着かせてくれるのは、やはり仲間の存在であると強く感じる。
人間のパフォーマンスが段違いに良くなる「learning zone」に日常的に入れるようにしていくのも大切だ。退屈な状態ではなくて、常に自ら刺激を求めていくようなイメージになるが、その刺激もあまり強すぎる刺激ではなく、知識を伴った刺激が良いと考える。
僕の場合は、気になる本があったらすぐに買うし、学んでみたいことがあれば即飛びつく。ずっとやっている作業に対して、自分が成長できるのかという部分もかなり意識していて、成長ができないようであれば止めて、また別の新しいことを常に探し始める。
こういった刺激を求めていく作業も、仲間が助けとなる。仲間が多ければ、その数だけ真新しい知識などに触れる機会も多くなるし、同じ数だけ成功談、失敗談も聞くことが出来る。不動産投資を始める際には、同じ志を持った仲間と共に切磋琢磨し合い、時には自分の物件の自慢話を聞いてもらったりしながら、楽しく続けて行っていただきたいと思う。