2025年度、社会保障関係費は54兆円にまで膨張!?
最近では、「2025年問題」というキーワードが新聞やテレビなどのメディアに盛んに取り上げられるようになりました。2025年は、「団塊の世代」の全員が75歳以上の「後期高齢者」になる年で、総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は30.3%まで上昇するとみられています。
医療や介護の需要は高齢になるほど増えるので、これから社会保障関係費が急増するのは間違いありません。その反面、日本の総人口は減少し続けており、特に国の財政を支える生産年齢人口が少なくなっています。
政府は、国と公的医療保険の医療費負担(医療給付費)が2012年度の35.1兆円から、2025年度には54.0兆円にまで膨れ上がると見ており、医療需要の急増に対応できる「効率的な医療提供体制」の整備を急務としています。
ところが社会保障関係費は、現時点ですでに年度ごとの予算だけでは賄いきれず「国の借金」で回しています。つまり2025年が目標では遅く、医療費削減は急ピッチで進んでいるのです。
また、医療技術の開発は日進月歩で進んでおり、医療の進歩とともに、1人当たりにかかる医療費が高くなる傾向にあることも考えなければなりません。
診療報酬制度の改定により、多くの病院が存続の危機に
さらに言えば、2025年はこれからやって来る本格的な少子高齢化の入り口でしかありません。国立社会保障・人口問題研究所が2016年4月に発表した将来推計によると、国内の総人口は2060年に9284万人ほどに減少し、高齢化率はこの年に38.1%まで上昇します。終戦直後の1950年の高齢化率は4.9%にすぎなかったので、わずか100年あまりの間に驚くべき急変ぶりです。
全人口の約40%が高齢化した世界を想像するのは難しいですが、今よりももっと働き手が減少し、十分な税収が得られなくなることが考えられます。にもかかわらず、社会保障関係費は恐ろしく増え続けるため、社会保障制度はこのままでは間違いなく破綻するでしょう。
そのため政府は現在、社会保障給付費の多くを占める年金と医療費の削減を懸命に進めています。効率的な医療提供体制の構築もその一つです。「地域包括ケアシステムの2025年までの構築」をスローガンに掲げ、入院の医療体制を再編したり、在宅医療の受け皿の整備を進めたりしています。
そして、より直接的な医療費の削減が「診療報酬の改定」です。
診療報酬とは、病院や診療所などの医療機関が提供する医療サービスへの対価のことで、病院経営の収入源となるものです。現在は「診療報酬1点=10円」と全国一律に設定されています。
医療行為ごとに細かく点数が決まっていて、点数は原則2年に1回、国によって見直されます(いわゆる「診療報酬改定」)。この診療報酬制度の改定によって、多くの病院が存続の危機に瀕しているのです。